岐阜新聞 映画部

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世界最高峰の指揮者に登り詰めた女性の苦悩

2023年07月03日

TAR/ター

© 2022 FOCUS FEATURES LLC.

【出演】ケイト・ブランシェット、ニーナ・ホス、マーク・ストロング、ジュリアン・グローヴァ―
【監督・脚本】トッド・フィールド

ターを出現させるケイト・ブランシェットの怪演名演快演

2019年に公開された『レディ・マエストロ』(マリア・ペーテルス監督)は、女性指揮者の草分けアントニア・ブリコの半生を描いた映画だった。 オランダ移民としてニューヨークへやってきたブリコは、激しい性差別に遭遇しながらも、夢の実現のため幾多の苦難に挑み続ける。

天才指揮者リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は、世界最高の交響楽団のひとつ、ドイツのベルリン・フィルで、女性として初めての主席指揮者にまで登り詰めた。

セルフプロデュースの才にたけたターは、本の出版をはじめ、自身をブランド化することで成功を手にした。

マーラーの交響曲第5番のライブ録音を終え、作曲家としてのキャリアを確かなものにするため、新曲の創作にも挑んでいる。しかし、今、順風だった彼女の道には漠然と壁のようなものが立ち塞がっていた。そして、完璧だったターの城は脆くも崩れ始める。

ターを演じるケイト・ブランシェットは、オーストラリア出身。国立演劇学校在学中から舞台演劇で高い評価を獲得。94年に映画界に進出した。『エリザベス』(シェーカル・カプール監督/98=日本公開99年)で、16世紀のイングランドの王女エリザベス1世を見事に演じ、歴史もの映画でその力量を発揮する一方で、『ロード・オブ・ザ・リング』(ピーター・ジャクソン監督/2001~03年)シリーズや、『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(スティーブン・スピルバーグ監督/08年)など、ファンタジーから冒険活劇まで、幅広い活躍をしている。本作の彼女も、まさしく "ター" 本人が乗り移ったような圧倒的な存在感を見せている。

物語は成功者の話ではない。今日的なことで言えば権力者のパワハラ、人種の傲慢さ、セクシャルな部分までに食い込む。一見、特異な世界、他人事ように見えるが、実は自分自身の身近にもある "毒" に気付かされる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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