岐阜新聞 映画部

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ベルファストの男子小学校の哲学授業を見つめたドキュメンタリー

2023年06月29日

ぼくたちの哲学教室

© Soilsiú Films, Aisling Productions, Clin d’oeil films, Zadig Productions,MMXXI

【出演】ケヴィン・マカリーヴィーとホーリークロス男子小学校の子どもたち
【監督】ナーサ・ニ・キアナン、デクラン・マッグラ

議論するは相手の話を聞くこと

"哲学" とは?

Wikipedia風に言えば、「人生・世界、物事の根源の在り方・原理を理性によって求めてようとする学問」となるが、これではよくわからない。または、「経験からつくりあげた人生観」と言われても、それを哲学に置き換えることすらできない。個人的には苦手というほかない。

"哲学者" では?

古くはギリシャの時代のソクラテス、プラトン、アリストテレスと教科書上の名前くらいは思い浮ぶ。デカルト、カント…とまるで呪文のような名前が続き、マルクス、ハイデガーとなると思想や政治とこんがらがる。やっぱり上手く馴染まない。

『ぼくたちの哲学教室』は、北アイルランドの首都ベルファストにある男子小学校で行われている哲学の授業を見つめたドキュメンタリーである。 ベルファストと言えば、プロテスタントとカトリックの対立による北アイルランド紛争が思い浮かぶ。

昨年公開された『ベルファスト』(ケネス・ブラナー監督)にも、そこに住まう人々の背景に立ち込める暗い世相として反映されていた。

哲学+ベルファストとなれば、何となく政治的な匂いがするが、これが小学校の主要科目になっていると聞くと、それは懸念にまでなる。

日本人は議論が下手だとよく言われる。これは議論以前の話、議論嫌いとも置き換えられる。

確かに、日本でもかつては、若者たちによる口角泡を飛ばす議論があったし、TVの深夜議論番組では、怒鳴り合いを見たこともあった。が、今はとんとおとなしい。

映画に登場するホーリークロス男子小学校の校長は「どんな意見にも価値がある」と哲学の授業での理念を語る。議論は相手の話を聞くことを第一とする…この "哲学" に貫かれる。そして何より、固苦しい哲学の入口がユーモアによって開かれていることも素敵だ。

懸念を振払い、日本の道徳教育についての考察にも、きっと役立つ映画である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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