岐阜新聞 映画部

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「哲学」の面白さがよくわかり、考えるのが楽しくなる映画

2023年06月29日

ぼくたちの哲学教室

© Soilsiú Films, Aisling Productions, Clin d’oeil films, Zadig Productions,MMXXI

【出演】ケヴィン・マカリーヴィーとホーリークロス男子小学校の子どもたち
【監督】ナーサ・ニ・キアナン、デクラン・マッグラ

自然と「考える癖」がついていく

北アイルランド紛争といえば、世界史的には多数派のプロテスタントと少数派のカトリックとの間の宗教対立で、1920年に始まり、1970年代~80年代には武力闘争が激化、1998年にようやく和平が成立し一応の平穏が保たれているという認識だ。

プロテスタントが多数派だと常識の様に思っていたが、2022年9月に北アイルランド統計調査庁が公表した2021年国勢調査によると、人口の42.3%がカトリック、37.3%がプロテスタント・他で、初めてカトリック教徒人口が上回ったということだ。

本作は、北アイルランド・ベルファストにあるカトリック系の「ホーリークロス男子小学校」に2年間密着し、なかでもケヴィン・マカリーヴィー校長が受け持つ「哲学」に着目したドキュメンタリーだ。

「哲学」というと、新明解では「宇宙や人生の根本問題を理性的な思弁により突き止めようとする学問。」と説明され、イメージとしては「とっつきにくく難しく、何をやっているのかよくわからない学問」だと思われがちだ。

しかしこの小学校では「対話」という昔からある方法により、「異なる立場の意見に耳を傾けながら、自らの思考を整理し、言葉にしていく」ことを小学生に教える。

例えばある生徒が暴力沙汰を起こしてしまったときには、「やられたらやり返してもいいのか?」をテーマに、「何が起きたのか」「そのうえで今どうすべきなのか」をみんなで考えていく。ちっとも難しくなく、自然と「考える癖」がついていく。

「暴力から対話へ」という思弁をすることは、憎しみの連鎖を断ち切ることができるかもしれないのだ。

私も「怒り」の感情をコントロールする「アンガーマネジメント」をかじったことがある。これは一種の手法であるが、哲学と結び付ければ、さらにわかりやすく効果的になるような気がしてきた。

「哲学」の面白さがよくわかり、考えるのが楽しくなる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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