岐阜新聞 映画部

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"悪しき女"に天罰をくらわすスパイダー・キラー

2023年06月27日

聖地には蜘蛛が巣を張る

©Profile Pictures / One Two Films

【出演】メフディ・バジェスタニ、ザーラ・アミール・エブラヒミ
【監督】アリ・アッバシ

イラン社会の保守性や女性蔑視も断罪

先日発表された男女格差の現状を評価した「ジェンダーギャップ指数2023」で、日本は146ヶ国中125位だった。G7の国ではドイツの6位はともかくイタリアの79位にも遠く及ばず、ライバルの韓国(105位)や中国(107位)よりも下だったが、イランの143位よりは上だった。

その日本より男女格差がチョット下のイランを舞台にしたデンマーク映画が、『聖地には蜘蛛が巣を張る』である。

監督はイラン生まれのアリ・アッバシ。主役は、危険を顧みない女性ジャーナリストのラヒミ(ザーラ・アビール・エブラヒミ)と、街に暮らす"良き女"を保護するため"悪しき女"に天罰をくらわす"スパイダー・キラー"サイード(メフディ・バジェスタニ)で、共にイラン人だ。内容が内容だけにイランで撮れるはずはなくヨルダンで撮ったそうだ。

映画は、ジャーナリストのラヒミの視点と、のちに犯人と判明する"良き夫で良き父"のサイードの視点で交互に描かれていき、やがてそれが合わさるときにクライマックスを迎えるというサスペンスフルな構成だ。

連続娼婦殺人事件ということで、地元の警察も聖職者も積極的には動かないどころか、市民の一部には"スパイダー・キラー"を称賛する空気感もある。犯人サイードは確信的であり、「街の浄化のために、代表してやっている」とむしろ得意げなのだ。

それはサイードが逮捕されてからの法廷シーンで顕著になる。一般庶民だったサイードが一躍時の人となり、英雄視されると彼は益々図に乗ってくる。反省なんかこれっぽっちもしてないのだ。果たしてサイードはどう裁かれるのか?は映画を観てのお楽しみ。

監督は、サイードはもちろん悪いが、その背景にあるイラン社会の保守性や女性蔑視も断罪している。売春は男が買って成り立つが、男の罪は問わずに女性のみを不潔なモノとして扱う。身勝手極まりない女性観。面白さ抜群の社会派映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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