岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

様々な差別意識の中で生きた少年たちの物語

2023年06月20日

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像

© 2022 Focus Features, LLC.

【出演】アン・ハサウェイ、ジェレミー・ストロング、バンクス・レペタ、ジェイリン・ウェッブ、アンソニー・ホプキンス
【監督・脚本・製作】ジェームズ・グレイ

解消も改善もない今に対する静かな問題提起

1980年、レーガン大統領の時代のニューヨークが舞台。クイーンズ地区に居を構えるウクライナ系のユダヤ人のグラフ家。その家族に生まれた11歳のポール(バンクス・レペタ)は、同じ地区にある公立学校に通っている。

父親のアーヴィング(ジェレミー・ストロング)は、夢追い人で懸命に働く良い男だったが、少々気が短いたちで、家族もポールからも距離を置かれている。ポールが信頼を寄せるのは祖父のアーロン(アンソニー・ホプキンス)だった。

幼くして芸術に目覚めたポールは、同級生たちからは変わり者とされ仲間はずれに。学校の理解は及ぶことなく、問題児扱いされ、孤立感は深まっている。

そんな学校で唯一、気持ちの通じ合う黒人のジョニー(ジェイリン・ウェッブ)に出会う。彼もまたポールと同じく、周囲からは爪弾きにされた存在だった。

『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』は、監督、脚本のジェームズ・グレイの少年時代の実体験をもとにしたドラマだが、その根底にあるのは、様々な差別の構図である。

アメリカにおける、アフリカ系アメリカ人による公民権運動の気運は1950年代頃から高まりをみせ法制定を獲得するが、その現状は今も変わることなく存在し、各地で人種差別的な問題による紛争が絶えることはない。

それは、アフリカ系に限定されるものではなく、白人至上主義的な風潮だけにとどまらず、民族的な、あるいはマイノリティに対する差別意識も根強く残っている。

ポールとジョニーは学校で問題を起こしてしまう。周囲は現状の変化を求める。それはふたりが築いた友情関係の解消を意味した。ポールは私立の学校へ転校し、再スタートという道に誘導されるが、経済的にもそんな変革が不可能なジョニーには新たな道が見えることはない。

少年の成長譚という物語の構図に新鮮さはないが、敢えてピリオドのない終わりからはじまる余韻は、静かだが強く訴えかけてくる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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