岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

現実を真摯に生きるシングルマザーの恋

2023年06月13日

それでも私は生きていく

【出演】レア・セドゥ、パスカル・グレゴリー、メルヴィル・プポー、ニコール・ガルシア、カミーユ・ルバン・マルタン
【監督・脚本】ミア・ハンセン=ラブ

レア・セドゥの演技で見事に浮かび上がるひとつの女性像

サンドラ(レア・セドゥ)は夫に先立たれ、8歳の娘リン(カミーユ・ルバン・マルタン)を女手一つで育てるシングルマザー。

通訳の仕事をこなしながら、忙しい毎日を過ごしているが、病を患っている父ゲオルグ(パスカル・グレゴリー)の見舞いも欠かさない。

かつては教師をしていた父だが、その記憶も徐々に失われ、最近では自分のこともわからないほどに、記憶障害は悪化していた。

かつての立派だった父の姿は失われていく。母フランソワーズ(ニコール・ガルシア)からも、施設への入所を持ちかけられるが、直ぐには踏ん切りがつかない。

張り詰めた緊張の糸が、今にも切れてしまいそうな危うい自分に気づくサンドラ。

そんな時、旧友のクレマン(メルビン・ブラボー)に再会する。

監督のミア・ハンセン=ラブは、昨年公開された、スウェーデンの巨匠イングマル・ベルイマン監督が愛した島を舞台にした、多重構成のラブストーリー『ベルイマン島にて』を手がけ、早くも成熟の域にあるフランス人の女流。本作は自らの体験をもとにしたオリジナル脚本の映画化である。 サンドラを演じるレア・セドゥは、本国フランスのみならず、アメリカ映画でも広く活躍している。本作では揺れ動く心理を繊細に演じている。

クレマンとの再会は新たな恋に進展して行くのだが、仕事、子育て、介護という運命をことさら悲観のみに染めることなく、恋によってほんのりと色づき、陽へと転じる瞬間を巧みに表現し、圧倒的な存在感で作品を支えた。

また、ミア・ハンセン=ラブ監督作品に共通する透明感をたたえた映像が、効果的に映画の色合いを醸し出す。

そして、物語には関係ないが、サンドラのファッションにも注目したい。ボーイッシュなショートカット、シンプルながら知的な雰囲気を漂わせる着こなし。ちょっとした隠し味。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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