岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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アカデミー賞9部門受賞に輝く歴史大作

2023年06月01日

ラストエンペラー 劇場公開版 4Kレストア

© Recorded Picture Company

【出演】ジョン・ローン、ピーター・オトゥール、ジョアン・チェン、坂本龍一
【監督】ベルナルド・ベルトルッチ

ヴィットリオ・ストラーロの撮影や一流が集結して完成させた映画芸術

『ラストエンペラー』を最初に観たのは、1987年の10月7日のことで、第2回東京国際映画祭のワールドプレミアで、場所は渋谷のNHKホールだった。オープニング、"RYUICIH SAKAMOTO" とクレジットタイトルが表示された時、客席から上がった拍手は忘れ難い。

今年、3月28日に71歳で亡くなった坂本龍一は、この作品の音楽でアカデミー作曲賞を受賞(共同)したが、この時はまだ受賞前。

俳優としては、甘粕正彦を演じている。甘粕は日本陸軍大尉時代、アナキストの大杉栄らを殺害した "甘粕事件" で知られる。

甘粕事件は大正12(1923)年、9月16日、アナキストだった大杉栄、伊藤野枝、甥の橘宗一(6歳)が憲兵隊に連行され、殺害、遺体遺棄された事件のことで、その首謀者が甘粕正彦だった。不思議なことに事件は犯行に関わった憲兵や、その背後にある陸軍の責任は問われることなく、甘粕の単独犯として処理されたことで、12月8日には禁錮10年の判決を受けている。

1950年、ハルピン。ソ連での抑留を解かれ帰国する中国人戦犯。その中に清朝最後の皇帝・溥儀(ジョン・ローン)がいる。彼に気づくものはなく、人目を逃れ、ひとり手首を切り自殺を図るー薄れゆく意識の中、浮かび上がる記憶。映画は回想というかたちで進行する。

1908年、北京。清の皇族に生まれた溥儀は、西太后の命により皇帝の座に就く。その時、まだ3歳だった。

『ラストエンペラー』にはどことなく、デヴィッド・リーン監督の大作の香りがする。本物で撮影された紫禁城や時代の流れに翻弄される主人公の姿がそう感じさせるのかも知れないが、少年溥儀の家庭教師レジナルド・ジョンストンをピーター・オトゥールが演じていることでイメージは強調される。

坂本龍一が演じた甘粕は満洲国成立当時、満洲映画協会の理事長に就任する。謎多き人物は謎のまま拳銃自殺する。 4Kレストア版で甦った歴史大作をご堪能あれ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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