岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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人災の事実は小説よりも奇なり

2023年05月24日

ノートルダム 炎の大聖堂

©2022 PATHÉ FILMS – TF1 FILMS PRODUCTION – WILDSIDE – REPÉRAGE – VENDÔME PRODUCTION

【監督】ジャン=ジャック・アノー
【出演】サミュエル・ラバルト、ジャン=ポール・ボーデス、ミカエル・チリ二アン ほか

延焼の様子がわかりづらいのは建物の複雑な構造のせいなのか?

昭和24(1949)年1月26日、奈良県斑鳩町の法隆寺金堂から火の手が上がり、国宝の十二面の壁画の大半が焼損した。

その翌年、7月2日、京都の鹿苑寺、通称金閣寺の国宝の舎利殿が焼失した。

法隆寺の火災は、電気系統からの失火と言われているが、原因の特定はできなかった。

一方、金閣寺の火災は、寺の21歳の従弟僧の放火によるものだった。犯人は火を放った直後に寺の裏手にある左大文字山に逃走、胸を短刀で突き、睡眠薬を飲んで自殺を図るも果たせず逮捕されている。

のちに、この放火事件をモデルにした小説「金閣寺」(1950年)が三島由紀夫によって発表される。犯人の供述による「美に対する嫉妬」は小説の主題となった。

金閣寺は焼失から5年後の昭和30(1955)年に再建され10月10日に落慶法要が行われた。

その20日後、犯人(判決では懲役7年)は恩赦によって釈放されたが、その翌年、肺結核により死去している。

法隆寺の火災を契機に制定されたのが、"文化財防火デー" で、貴重な文化財=伝統的建造物を災害から守る気運が漸く国によって示された。

2019年4月15日、パリのノートルダム大聖堂で発生した火災を報せるニュース映像は、今も記憶に新しい。

『ノートルダム 炎の大聖堂』は、この火災事件を事実に忠実に描いたドラマである。

新任の警備員が初めての仕事に就くところから始まる。マニュアルに則した一通りの手順の説明を受ける警備員。ちょっと頼りなさげに見えるのは、慣れない故の致し方ない姿か?

大聖堂では上階で修復作業が行われていて、火災の原因となる煙草の火の不始末、そこからの延焼の様子と、報知器が作動してからの信じられないようなずさんな対処。現場で勇敢に立ち向かう消防士たちの姿が描かれていく。

まだ生々しい記憶、まるでドキュメンタリーを見ているような迫力溢れる映画だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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