岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

パリの街が美しい、人生を変えたタクシー勤務

2023年05月23日

パリタクシー

© 2022 - UNE HIRONDELLE PRODUCTIONS, PATHE FILMS, ARTÉMIS PRODUCTIONS, TF1 FILMS PRODUCTION

【出演】マドレーヌ・ケレール、リーヌ・ルノー、シャルル・ホフマン、ダニー・ブーン、マドレーヌ・ケレール(若年期)、アリス・イザーズ、レイモン・アグノー、ジェレミー・ラウ―ルト
【監督・脚本・プロデューサー】クリスチャン・カリオン

微笑むたびに若返る。怒ると年を取る

やる事なす事上手くいかない免停寸前のタクシードライバー・シャルル(ダニー・ブーン)。人生の最終章のため、パリの反対側の施設へ向かう92歳の老婆・マドレーヌ(リーヌ・ルノー)。

一見何の変哲もない人であったり、その場に偶然遭遇した困っている人などを、慎ましく暮らす庶民が、自分の損得を考えずに普段の行い通りに親切にしたり助けてあげる。実はその人は大富豪で、その正体が分かった後に多額のお礼をしてもらい、人生が一発逆転する!

「人を見かけで判断しない」「困っている人には親切にする」などは、世界共通の人生訓のようだ。

本作は、人によっては「ありきたりな話」と紋切型に切って捨てられるかもしれない。さらにタクシー車内でのドライバーと乗客との会話という典型的設定もあり、「どこかで見たことがある」と、それこそ「ありきたりな批評」でくくられるかもしれない。

しかしベテランのクリスチャン・カリオン監督は、類型的なストーリーと設定を逆手にとって、独り暮らしの孤立した高齢者の問題、女性の自立やドメスティック・バイオレンスの問題を、独り善がりにならず、誰にでもわかりやすい娯楽映画に仕立て上げた。

92歳の老婆と言っても、さすがフランスはパリのマダム。実にエレガントで気品がある。ドライバーのシャルルも、そんな彼女の思い出巡りには、パリを東から西へ嫌な顔ひとつせずに付き合っていく。

マドレーヌは自分の人生をいささかも恥じることなく、シャルルに語っていく。その壮絶な人生は激しく過酷ではあったが、劇中で彼女が「微笑むたびに若返る。怒ると年を取る」というように、常に前向きでへこたれず、プラスの方向へと進めていくのだ。女性解放運動家としての彼女の行動は尊敬に値する。

そんな話を聞いていたシャルルは、最初の仏頂面から笑顔がこぼれるようになっていく。彼女の生き様は、人をチョッピリ変えたかもしれない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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