岐阜新聞 映画部

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父親と息子の心のすれ違いを描いた傑作

2023年05月22日

The Son/息子

© THE SON FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】ヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーン、ヴァネッサ・カービー、ゼン・マクグラス、アンソニー・ホプキンス
【監督・脚本・原作戯曲・製作】フロリアン・ゼレール

印象的な明から暗への反転

「The Son 息子」は、「ファーザー」で一昨年の岐阜新聞映画部の外国映画ベストワンに輝いたフロリアン・ゼレール監督の新作である。

高齢者の認知症を描いた映画は少なくないが、「ファーザー」は認知症に陥った当人の視点を大胆に取り入れ、その混乱ぶりをリアルに描いた画期的な傑作であった。

フロリアン・ゼレール監督のこの新作は、自身の戯曲を原作にした「家族3部作」の2作目で、不登校になったハイティーンの息子と父親の関係を描いた作品。

ヒュー・ジャックマン演じる主人公ピーターは弁護士で、妻(バネッサ・カービー)と赤ん坊の家族三人で幸せに暮らしていた。ある日、彼は前妻ケイト(ローラ・ダーン)から17歳の息子ニコラス(ゼン・マクグラス)の様子がおかしいと相談を受け、息子を引き取って一緒に暮らすことになる。

親の離婚が思春期の息子に与えた心の傷。父親は息子を愛していて、息子も父親を尊敬しているが、ふたりの思いはすれ違うばかりだ。

息子に不登校になった理由を何度問いただしても、最後まで答えないのもリアリティーがある。息子の心の闇を理解できない父親に、「対峙」で描かれた加害者の両親の姿が重なる。

観ていてとても辛い作品だが、登場人物の心の揺れを繊細に描いた傑作で、明から暗への反転が素晴らしい効果を上げている。

父親ピーター役のヒュー・ジャックマンと息子ニコラス役のゼン・マクグラスは共に印象的な好演。ピーターの父親役を、「ファーザー」で2度目のアカデミー主演男優賞を受賞したアンソニー・ホプキンスが演じている。

2022年の第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品のイギリス映画。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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