岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

閉塞感のある現代に、一石を投じた映画

2023年05月15日

茶飲友達

©2022茶飲友達フィルムパートナーズ

【出演】岡本玲、磯西真喜、海沼未羽/渡辺哲
【監督・脚本】外山文治

肌と肌のぬくもりで性と生を感じている

ENBUゼミナール・シネマプロジェクトの第7弾『カメラを止めるな!』(2018)は、都内2館の上映から全国375館・興行収入31億円超の大ヒットとなり社会現象化した。観客層は若者が多く占めたが、その現象を彷彿とさせる映画がまた現れた。

シネマプロジェクト第10弾『茶飲友達』は、外山文治監督のオリジナル脚本をベースに、ワークショップで選抜された33人の出演者による、高齢化社会の生きがいや性の問題と、行き場のない若者たちの問題を交錯させた社会派映画である。

コロナが収束する中、映画館にも観客が戻りつつあるが、まだまだ警戒しているのかシニア層は戻りが遅いらしい。そんな逆境の中、都内1館(ユーロスペース)でスタートした本作は、若者の街・渋谷で一番予想できない層が詰めかけ毎回満席。人に言いにくい「高齢者のセックス産業」というニッチな分野を描いているにも関わらず、次第に上映館数が増え全国展開していくという「シニア版カメ止め」現象になってきた。

2013年に摘発された「高齢者売春クラブ」事件をモデルにしているが、この時逮捕されたのは経営者。売春防止法の「周旋」という売春を仲立ちし斡旋したという罪だ。売春防止法は、買春者と売春者だけによる単純売春は、禁止されてはいるが罰則がないので逮捕されない。仲介と場所貸だけが罪に問われる。こんな背景を知りつつ観ると、より身近にそして深く映画が観られる。

でもそんな深刻な映画ではない。みんな孤独をかかえ生きづらい世の中を、「売春」という禁止された行為ではあるが、まさに肌と肌のぬくもりで性と生を感じているのだ。後ろめたさもなく淫靡でもなく、どちらかというとあっけらかんとしているのだ。

個性的なファッションに身を包む、高齢ガールズたち。一軒家のシェアハウスに住む生き生きとした若者たち。強いものだけが生き残る閉塞感がある現代に、一石を投じた映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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