岐阜新聞 映画部

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美しくエレガントなエッフェル塔を巡る歴史ロマン

2023年04月27日

エッフェル塔~創造者の愛~

© 2021 VVZ Production – Pathé Films – Constantin Film Produktion – M6 Films

【出演】ロマン・デュリス、エマ・マッキー、ピエール・ドゥラドンシャン、アレクサンドル・スタイガー、アルマンド・ブーランジェ、ブルーノ・ラファエリ
【監督】マルタン・ブルブロン

付きまとう景観論争と、近代的建造物

映画の中のエッフェル塔と言えば数知れないが、中でもクロード・ルルーシュ監督の『愛と哀しみのボレロ』(1981)のラストシーンで、ジョルジュ・ドンがボレロを踊った圧巻の17分でのエッフェル塔の姿は強烈だ。躍動する肉体は、エレガントなエッフェル塔の前でさらに美しさを増していて映画史に残る名シーンとなった。

本作は、エッフェル塔を設計したギュスターヴ・エッフェル(ロマン・デュリス演)の、建設の苦難と隠されたロマンスを描いた歴史ロマン恋愛映画だ。

歴史的建造物や街並みなどが美しい古都において近代的建造物を作るとなると、付きまとうのが景観論争だ。「東寺の塔よりも高いものは建てない」ことが不文律の京都に「京都タワー」が建ったのは1964年。当時は激しい反対の声が各所からあがったが、いまは当たり前の姿である。難しい問題だ。

パリのエッフェル塔もそうであったようだ。1889年のパリ万博の目玉であったが、モーパッサンなどの文化人・芸術家が「無用にして醜悪なるエッフェル塔」と非難するなど、倒壊を恐れる住民を巻き込んで激しい反対運動が起こった。

それに対してエッフェルは、「芸術家だけが美の創造者だというのは間違っている、技術者にも美しいものは作れる」と反論している。映画の中で直接的には描かれないが、労働者階級出身のエッフェルに対する上層階級の蔑視も見え隠れしているようだ。

マルタン・ブルブロン監督は、「自由・平等・友愛」がスローガンの「フランス革命」100周年で建てられたエッフェル塔を、そのスローガンの象徴ととして捉えている。だからこそ今も愛されているのだと。

恋愛劇の方は、昔の恋人アドリエンヌ(エマ・マッキー)との格差恋愛と破局、偶然再会してからの不倫関係と再度の別れというベタな展開で定番コースであるが、斬新さを期待しなければこれでいい。

いい意味でストライクのフランス映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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