岐阜新聞 映画部

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「RRR」とインド映画の魅力

2023年04月25日

RRR

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【出演】NTR Jr.、ラーム・チャラン
【監督・脚本】S.S.ラージャマウリ

3時間を長く感じさせないサービス精神

私が初めて観たインド映画は、国際的に高い評価を受けている巨匠サタジット・レイ監督の「大地のうた」。芸術性の高い詩的な傑作だが、映画大国インドの映画としては例外的作品で、当時の日本では大衆的なインドの娯楽映画は見ることができなかった。

そして1998年に、インド映画の特徴である歌と踊りの入った娯楽映画「ムトゥ踊るマハラジャ」が公開され大ヒットを記録。その後続々とインド映画が公開されることとなる。

私がこれまでに観たインド映画のベストワンは、ラージクマール・ヒラニ監督の「きっと、うまくいく」。インドの社会問題になっている若者の自殺とその原因である学歴社会をテーマに、自分らしく生きることの大切さを、ビリー・ワイルダー監督顔負けのストーリーテリングで描いた、フランク・キャプラ監督作品を彷彿とさせる幸福感に満ちた傑作。

「RRR」は、日本でもヒットしたアクション・アドベンチャー大作「バーフバリ」シリーズのS・S・ラージャマウリ監督作品。

アクション映画で、最高にボルテージが上がる鉄板と言える設定は、 好敵手による宿命の対決である。最近の映画では、香港映画の「レイジング・ファイア」、韓国映画の「ただ悪より救いたまえ」、アメリカ映画の「グレイマン」等がそれに該当する。唯一無二の親友となったふたりの主人公が、それぞれの目的のため激突する展開となる「RRR」の前半の面白さもそこに尽きる。そして後半では、前半で伏せられていた使命が明かされ、インドを植民地支配するイギリスの白人を悪役とする勧善懲悪活劇へとシフトしていく。

「RRR」のアクション・シーンは、荒唐無稽に振り切ったケレン味たっぷりなド派手なもので、その分リアリティーには欠ける。しかし工夫を凝らしたアクションの数々は飽きさせない。また偶然のオンパレードによるご都合主義的なストーリーも、ドラマを盛り上げる手立てとして許容範囲と言えよう。

インド映画ならではの歌と踊りの場面も魅力的で、3時間の上映時間を長く感じさせないサービス精神に圧倒される。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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