岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ライブで堪能する松竹ブロードウェイシネマ

2023年04月18日

ビリー・ホリデイ物語 Lady Day at Emerson’s Bar & Grill

©Evgenia Eliseeva

【出演】オードラ・マクドナルド
【監督・演出】ロニー・プライス

ちあきなおみ主演の日本版初演が観たくなる

『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』(シドニー・J・フューリー監督/1972=日本公開73年)は、伝説のジャズシンガー・ビリー・ホリデイの血と汗と涙に塗れた波乱の44年の生涯を描いた伝記映画で、幼い頃からその死までを網羅している。ビリーを演じたのは、当時 "ザ・スプリームス" の一員として人気絶頂だった歌手ダイアナ・ロスで、彼女の映画俳優デビュー作となった。

昨年公開された『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ』(リー・ダニエルズ監督)もビリーの伝記映画だが、その視点は、彼女の代表曲「奇妙な果実」の歌詞に内包された人種差別への告発に絞られている。

FBIは歌に込められた内容が、当時、激化していた公民権運動を煽動するものと問題視し、商業的な公の場での歌唱を禁止する。理不尽にターゲットにされたビリーはそれに反発、周囲の静止を振り切って歌い続け、逮捕される事態に発展する。

『ビリー・ホリデイ物語 Lady Day at Emerson’s Bar & Grill』は、彼女の死の4ヶ月前、フィラデルフィアの小さなジャズクラブで行われたライブを再現したもので、1986年にNYのオフ・ブロードウェイで初演された。

クラブでの歌唱とその合間のトークで構成されている。

映画の本作は、2014年、オードラ・マクドナルドを主演に、ブロードウェイで限定で再演されたもので、その後、12月にフィラデルフィアのジャズクラブ=カフェ・ブラジルでの公演を収録したものである。

当時を思わせるモノクロの画像が、ビリーの歌唱とともに色づきカラー映像となる。そのオープニングから、映画はライブ感覚を重視した構成がとられる。名曲の数々。トークは痛々しいまでに本音を吐露する。裏切り、自虐ネタのボヤき、繰り返される "逮捕=前科" の意味するところは、唐突で分かり辛いが、彼女の哀しみの傷跡は、腕の注射跡よりも複雑なのだが…。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る