岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

父が願うささやかな幸福、息子に捧げた愛情は深い

2023年04月17日

いつかの君にもわかること

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【出演】ジェームズ・ノートン、ダニエル・ラモント、アイリーン・オヒギンス
【監督・脚本】ウベルト・パゾリーニ

尾崎豊と尾崎裕哉の関係を思い浮かぶ

私はセカオワと共に尾崎豊が大好きで、今でも通勤途中では交互に聴いているくらいだ。26歳で亡くなった尾崎のライブには残念ながら行った事がないが、亡くなった当時2歳だった息子の裕哉君の名古屋ライブには、ここ数年欠かさず行っている。

尾崎豊が生まれたばかりの裕哉へ捧げた「誕生」の歌詞には、「新しく生まれてくるものよ おまえは間違ってはいない 誰も一人にはなりたくないんだ それが人生だ分かるか」と歌っている。

裕哉は、豊が亡くなった26歳の時にアンサーソング「始まりの街」をリリース。「幸せの形は変わっていくもの 愛の軌跡は消えることない 誇り高く生きて どんな願いでも叶えて欲しいのさ 僕は幸せさ これまでもこれからも」と返している。

本作を観ていて真っ先に思い浮かんだのは、この豊と裕哉の関係だ。若くして不治の病を患った33歳の父ジョン(ジェームズ・ノートン)と、男手ひとつで育ててきた4歳のマイケル(ダニエル・ラモント)。

"Nowhere Special"(どこにもない特別なもの)という原題から、『いつかの君にもわかること』という絶妙で素晴らしい邦題を付けた配給会社のセンスには恐れ入る。

4歳の息子には、父親が死んでしまうという意味はわからないし実感はないだろう。無邪気で天真爛漫なマイケルのために、ふさわしい里親探しを続ける父ジョンの心情を考えると涙が出てくる。

ジョンが窓拭き掃除人というのがいい。窓ガラス越しに、その部屋の中にいる人たちの人生が垣間見られる。うらやましさと共にあるのは、ささやかな幸福だ。

ジョンは思う、父が息子に伝えるもの。風船やおもちゃのトラック、手袋、誕生日のケーキのろうそく・・・。大げさでなく日常のありふれた、でも特別な何かを思い出として残していくのだと。

様々な里親候補の中から、最終的にジョンが選んだのは誰か?息子よ、幸福になってほしい。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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