岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

本選びのセンスがいい、本好き必見の映画

2023年04月10日

丘の上の本屋さん

© 2021 ASSOCIAZIONE CULTURALE IMAGO IMAGO FILM VIDEOPRODUZIONI

【出演】レモ・ジローネ、コッラード・フォルトゥーナ、ディディー・ローレンツ・チュンブ、モーニ・オヴァディア
【監督・脚本】クラウディオ・ロッシ・マッシミ

店主リベロとエシエン君、本で繋がる老人と少年

私は小学生の頃から本が好きだった。コロナ前までクラス会をやっていた今年88歳の担任の先生の影響が大きいが、学級文庫にあった「牛使いの少年」(小山勝清著)や「ビルマの竪琴」(竹山道雄著)、小学1年の頃に読んだ「ロボット少年 アップルくん」(永田竹丸著)や、読書感想文の定番ジュール・ベルヌの「十五少年漂流記」などは今でもよく覚えている。

そして中学生になって自分で見つけた井上ひさしの「ブンとフン」と松本清張の「点と線」。これら原体験が私のいまを作っているのだ。

『丘の上の本屋さん』の店主リベロ(レモ・ジローネ)は、本好きな人には分け隔てなく誰にでも暖かく接し、相応しい本を勧めている。この懐の広さが素晴らしい。

私は映画マニアであるが、好きな映画を聞かれてマウント取ったつもりで木下惠介とかアンゲロプロスの作品を得意げに言い、その後の話が続かなくなってしまう愚かな奴である。本屋のリベロは、私なんかとは大違いの男なのだ。

お店にやってくるお客さんはみんなチャーミングだ。隣りのカフェで働く常連の青年に、女主人に頼まれフォトコミックを探す家政婦の女性。この2人がお互いを好きになっていく過程は、山田洋次さんの映画の様で実に微笑ましい。狂おしいほどの恋愛もいいが、世の中の恋愛って大方こんなもんだ。恋の国イタリアだって純情な恋愛が基本なのだとよくわかる。

同性愛の恋人のためにSM趣味の本を求める女、捨てられた本を漁って小遣い稼ぎをする男、「我が闘争」の初版本を求めるネオナチ。みんな素敵なお客様である。

そして何より店の外で本を眺めていた移民の少年エシエン君(ディディー・ローレンツ・チュンブ)だ。貸し与える本は「ピノッキオの冒険」から始まり、最後の「世界人権宣言」まで、一つ一つに意味がある。本のタイトルを聞くだけでも、リベロのセンスの良さが光っている。

本好きな人、必見の映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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