岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

黄色い大地の貧村で生きる夫婦の物語

2023年04月04日

小さき麦の花

©2022 Qizi Films Limited, Beijing J.Q. Spring Pictures Company Limited. All Rights Reserved.

【出演】ウー・レンリン、ハイ・チン
【監督】リー・ルイジュン

中国で静かにヒットした作品に観客は何を見たか?

チェン・カイコー(陳凱歌)監督のデビュー作『黄色い大地』(1984年)が公開されたのは、1986年の夏だった。

日中戦争が始まって2年目の1939年春。中国中央部陝西省北部の農村が舞台。この地方に伝わる民謡を採集するため、ひとりの八路軍(共産党軍)の兵士がやって来る。村では結婚式が行われて賑わっている。

花嫁は13歳の少女。この地域では、花嫁を金銭で買い上げる売買婚がまかり通り、極貧の村では娘を金に変える非常識が常識になっていた。兵士が宿にした家では、寡黙な父と少し頭の弱い弟と、まもなく13歳になろうとする娘がいた。彼女は次は自分の番と知っていた。

荒れ果てた黄土の地、黄河への水汲みは一里の険しい道のり。姉弟にはそれが日常。

兵士は町では売買婚の風習は廃れ、男女は自分の意思で結婚相手を選べると少女に話す。それを聞いた少女は目を輝かせ、見たこともない大地の先の街の様子を思う。

中国映画は80年代のこの頃から公開作が続いた。それは第5世代と呼ばれる監督たちの作品で、その代表がチェン・カイコーであり、チャン・イーモウ(張芸謀)だった。

戦後生まれのこの世代は歴史に学び、侵略者日本を敵とし、闘いを勝ち抜いた共産党を支持したが、その物語に地域格差、社会の歪みを込める事も忘れなかった。しかし、1989年、天安門事件勃発…第5世代の頭は抑え込まれた。

『小さき麦の花』の舞台となるのは中国西北地方の農村(多分、陝西省)。マー(馬)家は4人兄弟だが、すでに両親と上の2人の兄は亡くなり、今は三男が家長となっている。四男ヨウティエは厄介者。半ば追い出されるように見合い結婚させられてしまう。体に障がいのある妻クイインとの結婚生活ははじまるが、その暮らしは決して楽なものではなかった。

時代の設定は2011年。共産党は地域格差はなくなったと実績を誇示する。貧しくとも懸命に生きる夫婦の生き様が美しく素晴らしい。目眩しの影、本当の豊かさとは何なのかという問いかけは、かつての世代の真摯な視点と重なる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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