岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

「砂の器」を彷彿とさせるミステリー映画の傑作

2023年03月21日

ある男

©2022「ある男」製作委員会

【出演】妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、坂元愛登、山口美也子、きたろう、カトウシンスケ、河合優実、でんでん、仲野太賀、真木よう子、柄本 明
【監督・編集】石川慶

人の運命を巡る深みのある人間ドラマ

平野啓一郎の同名小説を向井康介が脚色し、石川慶が監督した「ある男}が、第48回日本アカデミー賞に於いて、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、録音賞、編集賞の最多8部門で最優秀賞を受賞した。

芥川賞作家・平野啓一郎の「ある男」は、第70回読売文学賞受賞作。

監督の石川慶は、ポーランドの名門国立大学、ウッチ映画大学に留学して演出を学んだ。2017年に「愚行録」で長編映画デビューし、2019年の「蜜蜂と遠雷」では毎日映画コンクールの日本映画大賞と監督賞を受賞している。作家性のあるエンタテインメント作品を撮る監督で、脚本家の向井康介とは「愚行録」でもコンビを組んでいる。

子どもは親を選んで生まれることができない。人は親や家庭環境、そして血筋などでいわれなき差別を受ける。この映画を見ると、そんな苦しみから逃れ、別の人生を生き直したいという気持ちも理解できる。

「ある男」は、ささやかな幸福を夢見たある男(窪田正孝)と、彼と短い期間ではあるが幸福な家庭を築いた女(安藤サクラ)、そして彼の人生をたどることで自身のアイデンティティの問題に心揺れる弁護士(妻夫木聡)の三人を描いたヒューマン・ミステリー映画の傑作。

脇の登場人物を含む俳優陣の好演(特に柄本明の怪演が印象に残る)と、味わい深いディテール描写により、「砂の器」を彷彿とさせる人の運命を巡る深みのある人間ドラマに結実している。

石川慶監督はこれまで撮影監督にポーランド出身のピオトル・二エミイスキを起用していたが、今回は「万引き家族」などの近藤龍人が撮影監督を担当。陰影に富んだ撮影で、作品をよりドラマチックなものにしている。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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