岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

キネ旬ベストテン2位、現代を切り取った傑作

2023年03月21日

ある男

©2022「ある男」製作委員会

【出演】妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、坂元愛登、山口美也子、きたろう、カトウシンスケ、河合優実、でんでん、仲野太賀、真木よう子、柄本 明
【監督・編集】石川慶

自分とは何なのか?真実の顔は一つなのか?

キネ旬ベストテン大会を彷彿とさせるCINEXのラインナップ、キネ旬2位の『ある男』(岐阜新聞7位)は、主要映画賞では、日アカ・ブルーリボン・報知の各大賞を受賞。キネ旬・毎日の各大賞の『ケイコ 目を澄ませて』と2022年の映画賞を分け合った。ちなみに岐阜新聞1位は『愛なのに』である。

石川慶監督は45歳。豊橋出身で、時習館高から東北大という私の地元・東三河のエリートだ。その後ポーランドで映画を学び、『愚行録』(2017/ワーナー/キネ旬17位)でデビュー。その後『蜜蜂と遠雷』(2019/東宝/キネ旬5位)、『Arc アーク』(2021/ワーナー/キネ旬105位)と発表。『ある男』(2022/松竹)が第4作である。

最近の映画監督は、自主映画やインディーズでデビュー、その後メジャーというパターンが多いが、石川監督は4作品ともすべてメジャー配給という今どき稀有な人だ。だからといって万人向けの無難な作品は一本もなく、攻め続けているところがまた凄い。

本作のテーマは、端的に言えば「自分とは何なのか」。家族向けの顔、仕事場での顔、友達付き合いでの顔、それらと全く別の場所の顔。

谷口里枝(安藤サクラ)の夫・大祐(窪田正孝)が、実は全くの別人であったという衝撃の事実。もちろん彼女は真相を知ろうとするのだが、結婚していた期間は実に幸せな家庭だったわけで、その幸福さが全面的に失われるのだとは思えない。

戸籍取り換え事件を調査する城戸弁護士(妻夫木聡)は、帰化した在日韓国人三世。妻の両親はそれを受け入れているものの、時おりチラッと差別意識的なものが見え隠れする。

ちまたではヘイトスピーチが平然と行われる多様性とは無縁の世の中。

映画は、自分の中にも色々な自分がおり、そのどれをも含めて自分自身なのだと言っているような気がする。

物語の面白さに社会性が巧みに織り込まれた傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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