岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ある愛のカタチとその行方

2023年03月15日

エゴイスト

© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会  

【出演】鈴木亮平、宮沢氷魚、中村優子、和田庵、ドリアン・ロロブリジーダ/柄本明/阿川佐和子
【監督・脚本】松永大司

鎧を着る事と愛を信じようする事

煌びやかな衣装を纏ったファッションモデルがカメラマンの指示に促され、様々なポーズを決める。連続するシャッター音。採光や照明の確認。華やかな業界の一コマ。男の職場。

男が鄙びた駅に降り立つ。たまの帰郷だとわかる。すれ違う男がいる。高校生頃のフラッシュバック…過去の苦い記憶…同窓生らしき男をクソ野郎と吐き捨てる…差別の記憶。故郷を捨てた男。その帰郷には鎧が必要。高価なブランドのスーツに身を包み、威風堂々とした歩み。

実家。老いた父親がひとり暮らす。仏壇に手を合わせる。亡き母の命日の定期的な訪問。当たり障りのない親子の会話。

夜。新宿。3丁目の末廣亭前を行く男・斉藤浩輔(鈴木亮平)。これから繰り出すぞ!という高揚感に溢れる歩み。

新宿2丁目。とあるバー。浩輔の他、男たちがテーブルを囲む。仕草、言葉尻、話題の端々にゲイの場が浮かび上がる。同性婚の自虐ネタ。美容や体型維持のための情報交換。ひとりのパーソナルトレーナーが話題になる。若い、未熟、初心、幻想の品定め。

ーここまでの浩輔をめぐる情報の提示が秀抜。

そして、浩輔はパーソナルトレーナー龍太(宮沢氷魚)と出会う。

『エゴイスト』はエッセイスト高山真の自伝的同名小説を原作としている。前半は同性のカップルの恋愛劇として進行するが、一変する後半はシンプルに、一途な普遍的な愛のカタチが提示されることになり、題名に込められた意味が次第に分かってくる。

執拗に描かれる男×男の性愛シーンは、マニュアルに沿ったような丁寧さで、エロチックにグロテスクの境界を巧みに擦り抜ける。

前後半の様変わりを指摘したが、前半にも所々に与える愛の形が、伏線のように散りばめられている。一見、ドライに割り切った愛のカタチ。それは授与の立場で変わるように、観るものの解釈でも違いが生まれる。哀しくとも優しさにあふれた美しい映画だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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