岐阜新聞 映画部

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CG一切無し、手に汗握るとはこのことだ!

2023年03月09日

人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版

©TBSテレビ

【監督】武石浩明

山野井さん、長生きしてください

WBCで活躍が期待される大谷翔平選手なら野球に関心が無い人たちでも知っていると思うが、アジア人で初めてピオレドール生涯功労賞を受賞した登山家でクライマーの山野井泰史さんのことは、この映画を観るまで何も知らなかった。

私は邦洋ジャンルをこだわらず、面白そうな映画だったら確認したくなる依存症気味の映画マニアであるが、その体質のおかげで、この歳になってまた新しい分野に知識の野を広げることが出来た。山野井泰史さん、命知らずの、でも実は生きることに執着した究極の人生クライマーだ。

山野井さんが挑むのは、細分化された登山の中のアルパイン・クライミング。一瞬の判断ミスが命を失うことに直結する、まるで戦場の兵士の様な過酷なスポーツである。

映画の中では、直近のクライミングとして、南伊豆の未踏峰の岩壁を登っていくシーンが撮影されている、垂直というよりそれ以上に切り込んだ絶壁、岩というよりボロボロとこぼれる土の様な岩壁。CG一切無しの、手に汗握るとはこのことである。

1996年、幾人もの世界的クライマーが挑み断念してきたヒマラヤ、マカルー西壁。山野井さんも挑むのだが途中で断念するのがむしろ誇らしい。

2002年、ヒマラヤ、ギャチュン・カン北壁登頂に成功するも、下山中に荒天に遭遇し両手両足の計10本を切断する。

でも一番凄いと思うのは、映画に出てきた仲間の多くが滑落事故で亡くなっている中で、この映画の舞台あいさつに出席されていること、つまり生きていることだ。

彼は基本的に一人で登るソロクライミングだが、本当に慎重である。一緒に登る人がいる時は、絶対に無理をしない。今までの数多い登山・クライミングで、一緒に行った人を誰一人死なせてないし怪我もさせてないのだ。

確実性が無いときは決してギャンブルクライムをしない!奇跡は運にたよるだけではない!

山野井さん、長生きしてください。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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