岐阜新聞 映画部

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堕胎が違法だった時代のひとりの女性の戦記

2023年02月28日

あのこと

© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB.

【出演】アナマリア・ヴァルトロメイ、サンドリーヌ・ボネール
【監督】オードレイ・ディヴァン

原作はノーベル賞作家アニー・エルノーの実話

昨年6月、アメリカの連邦最高裁所が「中絶は憲法で認められた女性の権利」とする49年前の判断を覆したことがニュースで伝えられた。 この49年前の判断とは?

1973年に南部テキサス州で、妊婦が起こした訴訟ー「母体の生命を保護するために必要な場合を除いて、人工中絶を禁止する」という州の現行法は、女性の権利を侵害し違憲だと訴えたもので、この最終的な判断は「胎児が子宮の外で生きられるようになるまでなら中絶は認められる」というもので、これは連邦最高裁が下した。

しかし、この判断の根拠となったのはプライバシー権を憲法上の権利として認めた、合衆国法の修正第14条で、つまりは憲法では明文化されていないことを意味する。女性が中絶をするかどうかを決めるのは、個人的な問題を自分の意思で決定するプライバシーだという判断なのだから、揺らぐことは必然だと言えるのかも知れない。

現在、連邦最高裁の判事9名の内、保守派は6人、リベラル派は3人という顔ぶれ、保守派は中絶に反対、リベラル派は擁護の立場である。

1960年代のフランスが舞台。決して裕福ではない家庭に育ったアンヌ(アナマリア・バルトロメイ)は持ち前の向上心と努力で、希望する大学に入学し、将来は学士になることを目標としていた。

ある日、予期しなかった妊娠が発覚する。

当時のフランスでは、堕胎は違法とされた。アンヌは激しく動揺する。近づく大切な試験のこと、さらにその先の将来に対する夢を崩しかねない障害。歩みが停止することへの危機感。

アンヌの12週間におよぶ戦いがはじまる。

演出の視点は常にアンヌからぶれることはない。何を考え、次に何をするべきかを模索する姿に肉薄し、彼女の肉体に走る痛みの共有までも迫る。性差で語るべきでもないし、時代で片づけるべきでもない。今に突きつけられた厳しい映画だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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