岐阜新聞 映画部

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ルイス・ウェインの生涯をおった波乱万丈のドラマ

2023年02月21日

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ

©2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

【出演】ベネディクト・カンバーバッチ、クレア・フォイ、アンドレア・ライズボロー、トビー・ジョーンズ、オリヴィア・コールマン(ナレーション)
【監督・脚本】ウィル・シャープ

猫ちゃんたちが喋りかけてくれているようだ

日本では、歌川国芳の浮世絵に描かれたり、招き猫が縁起物として扱われるなど、昔から猫は可愛がられてきたが、西洋ではそうではなかったようだ。

キリスト教が広まった中世ヨーロッパでは、猫は夜行性であったり人の命令に従わない特有の性質から悪魔的とみなされ、折からの魔女狩りとも重なって大変な迫害にあっていたらしい。特に黒猫は「魔女の使い魔」として忌み嫌われていた。

不遇の時代が続いた猫だったが、ペストの流行などでネズミ駆除の必要性に迫られ猫の人気が徐々に復活。それに一役買ったのが本作の主人公、イギリス上流階級の出でイラストレーターのルイス・ウェイン(1860~1939)(ベネディクト・カンバーバッチ演)なのである。

本作は、世間知らずで金銭感覚に疎く、変わり者だが純粋な男ルイス・ウェインの生涯をおった波乱万丈のドラマだ。

彼は、牛を描くために牛に近づきすぎて怪我をしてしまうなど、常識外れの行動をする面倒くさい男だが、彼の描くスケッチは、2本の腕を巧みに使って驚くべき速さで正確に描く。それも実物を前にせずとも記憶だけでも描けるのだ。

これは今でいうギフテッド(特定の能力が突出して高い人)であり、一方で社会的能力が劣っていたところをみると、発達障害も併せ持っていたのではないかと思われる。

彼は徐々に成功し大きな名声を得るが、いつも金に困っている様子だ。それは著作権の概念が無く権利意識も弱く、世間知らずの子羊が、どう猛な狼の餌食になってしまったからだ。

しかしながら彼の描く猫たちは本当に可愛らしい。人に近い擬人化した猫ではなく、猫そのものが人間っぽく振る舞う構図。私の家では猫を3匹飼っているが、あたかもその猫ちゃんたちが喋りかけてくれているようだ。

晩年のルイス・ウェインは統合失調症に苦しみながら、激しい妄想で作風が変わっても猫を描き続けている。天才の一生を描いた映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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