岐阜新聞 映画部

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二宮和也さんの新たな代表作が誕生!

2023年02月13日

ラーゲリより愛を込めて

©2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 ⓒ1989 清水香子

【出演】二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人、寺尾聰、桐谷健太、安田顕 ほか
【監督】瀬々敬久

過酷なシベリア抑留、リアルな描写が半端ない

私の町内に、長野県出身で満蒙開拓青少年義勇軍に志願して満州に渡り、戦後シベリア抑留された方がいた。95歳で亡くなったが、晩年には「昨日まで普通に話していた戦友が、朝起きたら冷たくなっていた」など過酷な体験の語り部となっていた。

1945年の敗戦で、アジア各地に在留していた約660万人の軍人・軍属・民間人が日本へ引き揚げることとなった。1947年までに約624万人が引き揚げたが、ソ連へは約60万人が強制連行され、マイナス40度を下回る厳しい環境で強制労働、1956年の最終帰還までに約6万人が命を落したと言われる。ソ連の戦後の労働力不足を補うための抑留で国際法上も許されないことだが、当時の敗戦国の日本政府はなすすべもなかったのだ。

本作は、シベリア抑留の過酷な状況を通じて戦争がもたらす惨禍を直視すると共に、戦争を始める時は国民を勇ましく駆り立て送り出した国家が、敗戦したら国民を放り出し命の保護さえままならない無責任な状態になるという現実を描いた、広い意味での反戦映画である。

先述の実体験者から聞いてはいたが、映像となるとリアルさは半端ない。夏に連行されたため厳冬に耐える服もなく、食料も乏しく、暖房も虚しく、過酷な労働のあとの夜はただ耐え忍ぶだけ。娯楽道具も見つかれば没収という理不尽さだ。

ここまでは予想したが、2つの点で驚いた。1つは、日本人捕虜を効率よく管理するため、旧日本軍の階級のまま日本人に管理させていたこと。やるせなさすぎる。

もう1つは、ソ連型社会主義思想を押し付け、生き抜くために洗脳させようとしたこと。うすら寒く気色悪い。

妻子との約束を果たすため決して生きる希望を失わなかった山本幡男を演じた二宮和也さんは39歳。23歳の時の『硫黄島からの手紙』と同じような境遇だが、円熟味を増してきており、仲間思いの優しき男を自然体で演じている。新たな代表作となった。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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