岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品泣いたり笑ったり B! ユーモアとペーソスのイタリア式コメディー 2023年02月06日 泣いたり笑ったり © 2019 Warner Bros. Entertainment Italia S.r.l. - Picomedia S.r.l. - Groenlandia S.r.l. 【出演】アレッサンドロ・ガスマン、ジャスミン・トリンカ、ファブリツィオ・ベンティヴォッリオ、フィリッポ・シッキターノ 【監督】シモーネ・ゴーダノ 同性婚でも社会は変わらない、変わるはずがない イタリア映画から知ったイタリアは、中年紳士が美少年に恋するという映画史上の傑作『ベニスに死す』のヴィスコンティ監督(バイセクシャルを公言)や、私が史上最もエッチな映画と思っている『ソドムの市』のパゾリーニ監督(ゲイを公言)などのイメージから、勝手にLGBTQが開かれている国と思っていた。 しかしよく考えてみれば、「同性愛は自然法に反する罪深いもの」と規定するローマ・カトリック教会のおひざ元なんだから寛容だったはずがない。 事実OECDが2019年に発表した「同性愛の需要度調査」によると、イタリアは加盟国36か国中の30位という不寛容度だ。(1位はアイスランド2位スウェーデンと北欧諸国が上位を占めている。ちなみに首相が「同性婚は社会が変わってしまう」と述べた日本は25位である)。 本作は、陽気で情熱的、フレンドリーでポジティブシンキングというイメージ通りのイタリア人が織りなす、"笑って笑ってホロッと泣いて"という、ユーモアとペーソスのイタリア式コメディーである。それは日本の喜劇に近い味わいで、藤山寛美が活躍した松竹新喜劇を思い出す。 富裕層で自分の快楽を中心に過ごしてきた伊達男トニ(ファブリツィオ・ベンティヴォッリオ)と、労働者階級でマッチョな漁師カルロ(アレッサンドロ・ガスマン)が恋に落ちる。『君の名前で僕を呼んで』のような美少年どおしの恋は切ない映画になるが、『おっさんずラブ』のようなおっさんどおしの恋は笑いながら見られる。バカにしているのではなく、純情さが可愛らしいのだ。 笑いの要素はたっぷりだが、一番面白かったのは、普段はリベラルな発言をして進歩的陣営にいるトニの娘ペネロペ(ジャスミン・トリンカ)が、身内のことになると同性愛に拒否反応を示すところだ。リベラルが鼻もちならないのではなく、先入観や偏見が根強く残っていることを端的に表している。実に賑やかな映画だ。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年09月06日 / 幸せのイタリアーノ 嘘からはじまるロマンチックコメディ 2024年09月06日 / 愛に乱暴 真面目に生きてきた女性が壊れる 2024年09月06日 / 愛に乱暴 人間の我慢の限界を描き、本質に迫った映画 more 2024年06月05日 / shimane cinema ONOZAWA(島根県) 山陰の地方都市に復活した街の小さな映画館。 2018年12月26日 / 高崎電気館(群馬県) 閉館された映画館にふたたび灯がともる時 2023年04月12日 / 丸の内TOEI(東京都) 銀座にある東映のメイン劇場で映画の醍醐味を満喫。 more
同性婚でも社会は変わらない、変わるはずがない
イタリア映画から知ったイタリアは、中年紳士が美少年に恋するという映画史上の傑作『ベニスに死す』のヴィスコンティ監督(バイセクシャルを公言)や、私が史上最もエッチな映画と思っている『ソドムの市』のパゾリーニ監督(ゲイを公言)などのイメージから、勝手にLGBTQが開かれている国と思っていた。
しかしよく考えてみれば、「同性愛は自然法に反する罪深いもの」と規定するローマ・カトリック教会のおひざ元なんだから寛容だったはずがない。
事実OECDが2019年に発表した「同性愛の需要度調査」によると、イタリアは加盟国36か国中の30位という不寛容度だ。(1位はアイスランド2位スウェーデンと北欧諸国が上位を占めている。ちなみに首相が「同性婚は社会が変わってしまう」と述べた日本は25位である)。
本作は、陽気で情熱的、フレンドリーでポジティブシンキングというイメージ通りのイタリア人が織りなす、"笑って笑ってホロッと泣いて"という、ユーモアとペーソスのイタリア式コメディーである。それは日本の喜劇に近い味わいで、藤山寛美が活躍した松竹新喜劇を思い出す。
富裕層で自分の快楽を中心に過ごしてきた伊達男トニ(ファブリツィオ・ベンティヴォッリオ)と、労働者階級でマッチョな漁師カルロ(アレッサンドロ・ガスマン)が恋に落ちる。『君の名前で僕を呼んで』のような美少年どおしの恋は切ない映画になるが、『おっさんずラブ』のようなおっさんどおしの恋は笑いながら見られる。バカにしているのではなく、純情さが可愛らしいのだ。
笑いの要素はたっぷりだが、一番面白かったのは、普段はリベラルな発言をして進歩的陣営にいるトニの娘ペネロペ(ジャスミン・トリンカ)が、身内のことになると同性愛に拒否反応を示すところだ。リベラルが鼻もちならないのではなく、先入観や偏見が根強く残っていることを端的に表している。実に賑やかな映画だ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。