岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ちょうどよくダメな女の子の輝いていない青春映画

2018年03月19日

タイニー・ファニチャー

【出演】ローリー・シモンズ、グレース・ダナム、ジェマイマ・カーク、アレックス・カルボウスキー、デヴィッド・コール、メリット・ウェバー、エイミー・サイメッツ
【監督・脚本・主演】レナ・ダナム

やる気が出なくても、やるべき事が見つからなくても、まずは生きていこうよ

 岐阜新聞映画部員の加藤るみさんによる「第1回加藤るみの映画館で会いましょう。」で、『タイニー・ファニチャー』の日本初のロードショーを観た。監督は、主演も務めた若手女性監督の注目株レナ・ダナム。大学で映像制作を学んだオーラ(レナ・ダナム)が、卒業してニューヨークの実家に戻るが、成功した芸術家のお母さんと美人で才能豊かな妹に挟まれて、情けない日々を送るという、チョッとおデブな女の子の輝いてない青春映画である。そのダメさ加減がちょうどよく、甘えているのに実家にいる事は恥ずかしく思っていたり、特に努力するわけでもないが、母や妹に追及されるとブチ切れてしまうところなど、そう簡単には成長できるはずがないという描き方が素晴らしい。
 彼女の友人たちもキラキラ輝ている奴など誰もおらず、お金がなくてデート代も払えなくてオーラの家で寝泊まりする男や、デートをすっぽかしても悪びれる様子が一切ないバイト先のシェフなど、もうみんな自分と似たり寄ったりだ。
 日常のチマチマした出来事を、淡々と積み重ねていく手法はウディ・アレンのようであり、劇中彼の本も出てくる。コメディセンスも彼流で、にやりとした笑いが劇中を彩る。
 出演者は母や妹や友人たち、撮影場所は実家であるという家内制手工業のような映画だが、撮影はのちに『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を撮るジョディ・リー・ライプスであるためか、狭い部屋を左右に分けたり、観光地でないニューヨークの街を生き生きと捉えたり、シネマスコープの大きさを上手に使っている。
 オーラがお母さんの日記を見つけ、同じように「自分は何者なのか、何がしたいのか」などと迷っていた事を知って以降、物語はちょっぴり進展する。悩んでいる事を肯定し、すぐには決まらなくてもくよくよせず、やる気が出なくても、やるべき事が見つからなくても、まずは生きていこうよという映画であった。

『タイニー・ファニチャー』は岐阜CINEXにて23日(金)まで公開中。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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