岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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ショーン・ペンが親子で演じる、実の親娘のお話

2023年01月02日

フラッグ・デイ 父を想う日

©2021 VOCO Products, LLC

【出演】ディラン・ペン、ショーン・ペン
【監督】ショーン・ペン

父が悪党で欠点だらけでも、何故か憎めず嫌いになれない

本作はジャーナリストのジェニファー・ヴォーゲルが、その父で贋札犯のジョン・ヴォーゲルとの親娘関係を、編年体で回顧していくという設定だ。父親ジョンをショーン・ペン、娘のジェニファーをディラン・ペン、息子のニックをホッパー・ジャック・ペンという本物の親子が演じ、ショーンが監督という血縁関係の濃い映画である。

ジョンが生まれたのは6月14日の「フラッグ・デイ(星条旗制定記念日)」ということで、彼は自分の誕生日を全米中で祝ってくれていると感じている。トム・クルーズの『7月4日に生まれて』(独立記念日)と同じ感覚かもしれない。

映画は娘ジェニファーから見た父ジョンであるが、例え祖母から「フラッグ・デイに生まれた男はクズに決まっている」と決めつけられようが、母から「パパはあなたが思ってるような人じゃない」と言われようが、彼女にとって父は奔放で魅力的なのだ。大人になってから、父が悪党で欠点だらけの不完全な人間だとわかって一度は決別するも、何故か憎めず嫌いになれない。

虚栄心のかたまりで自己防衛のためには平気で嘘をつき、それが何故だめなのかは決して理解しない。反省の言葉を何度も口にはするが、舌の根も乾かぬうちに次の虚栄に走ってみたり、悪事にも手を出す。世間的には全く信用できない男で、平気な顔で相手を騙し、時には騙される。

中でもジェニファーにプレゼントするという、ありもしないジャガーをキャンセルする電話のシーンは強烈で、もはやジョンには嘘を付いているという自覚などなく哀れである。

犯罪者やダメ人間に対するは慈しみは、人間を愛するという意味では理解できるし感銘を呼ぶことさえある。

しかし実話であるジャーナリストと犯罪者の親娘関係を描くのに、ショーン・ペン自身が実の子どもを起用したため、複雑な親子関係とはならず全体に甘くなってしまった感は否めないが、父を想う気持ちに変わりはない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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