岐阜新聞 映画部

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自分の夢を実現するのか?幼き弟を守るのか?選択は?

2022年12月26日

シスター 夏のわかれ道

© 2021 Shanghai Lian Ray Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved

【出演】チャン・ツィフォン、シャオ・ヤン、ジュー・ユエンユエン、ダレン・キム
【監督】イン・ルオシン

寅さんみたいなダメ叔父さん、魅力がいっぱい

中国共産党政府による悪しき一人っ子政策と、中国社会に蔓延る男尊女卑・家父長制の文化は、社会主義的変革を目指す世界のリベラルな人たちにとって邪魔者でしかない。

それは恐らく多くの中国人にとっても同じようで、本作が描いている現近代の中国にも、これらの影響が根深く残っていることが巧みに織り込まれている。本国で大ヒットしたのは共感を呼ぶ部分が多いということだ。

主人公アン・ラン(チャン・ツィフォン)の境遇は、中国の独善的な政策や封建的な文化に翻弄されている。北京の医大を目指すほどの秀才であった彼女だが、「女は地元で家族の世話をしろ」との考えから、勝手に願書を看護科に替えられてしまう。極めつけは、どうしても男の子が欲しい親から「障害者のふりをしろ」と強要されること。一人っ子政策も色々抜け道があって「不正」が蔓延っていたようだが、人権に関する観念は無きに等しい。

疎遠にしていた両親が交通事故で亡くなり、見たことも会ったこともなかった幼い弟ズーハン(ダレン・キム)を、彼女は選択の余地もなく引き取ることになる。

アン・ランは、今では看護師をしながら医者になるために北京の大学院進学を目指しているが、弟がいては北京には行けない。さあ彼女は自分の人生をどう選択するのか?がこの映画の根幹のテーマだ。

知識を身に付けてよりよく生きたいと願う姉と、大人が守らなければいけない幼い弟。彼女の伯母さん(ジュー・ユエンユエン)もまた、弟であるアン・ランの父のためにと考える余地もなく夢を犠牲にしてきた。こんなことがいつまで続くのか?1986年生まれの監督イン・ルオシンは、中国当局の検閲に引っかからないギリギリの線で観客に問いかける。

こんな中でも、私は麻雀ばかりしているダメ叔父さん(シャオ・ヤン)の存在が大好きだ。まるで寅さんみたい。世間的にはポンコツでも人間的には魅力がいっぱい。ホッとするのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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