岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

タイムリープでたどる閉ざされた世界

2022年12月20日

ファイブ・デビルズ

©2021 F Comme Film - Trois Brigands Productions - Le Pacte - Wild Bunch International - Auvergne-Rhône- Alpes Cinéma - Division

【出演】アデル・エグザルコプロス、サリー・ドラメ、スワラ・エマティ、ムスタファ・ムベング、ダフネ・パタキア、パトリック・ブシテー
【監督】レア・ミシウス

何を語ろうとしたのかがわからない結末に悶々とする

『ファイブ・デビルズ』は、主人公のヴィッキー(サリー・ドラメ)が、特殊な能力によって、母の記憶にある時空にタイムリープする話である。

先日公開された『秘密の森の、その向こう』(セリーヌ・シアマ監督)も同じ、母親の幼少期へとタイムリープする話だった。

描き方が全く異なるこの2作を比較することはできないが、『ファイブ・デビルズ』で長編2作目を監督したレア・ミシウスとセリーヌ・シアマは、フランスの新進女流監督として共通し、同じ国立映画学校の出身者でもある。そして、映画の中で内在するいくつかのテーマでも、不思議な共通項を共有している。

嗅覚に敏感でそこに不思議な能力を身につけたヴィッキーは、大好きな母ジョアンヌ(アデル・エグザルコプロス)の香りを密かに集めている。

ある日、叔母のジュリア(スワラ・エマティ)が現れ、ヴィッキーのまわりが騒めき出す。そして、ジュリアが持っている小瓶の香水の香りを嗅ぐことで、過去の時空にリープ出来る能力が覚醒する。そこはヴィッキーの生まれる前の世界、母と叔母の過去の世界だった。

その世界は山麓にある小さな村で、閉鎖的なコミュニティーを形成している。

ジョアンヌとジュリアは女性同士の関係にあるが、村には激しい人種差別があり、勿論、同性愛など許されるものではなかった。

シアマ監督が描いたタイムリープは、ごく自然に入って行ける入口があったにすぎない。本作のタイムリープの表現には覚醒の瞬間が用意されているが、あくまでリアルな描写にとどめる抑制も存在する。しかし、決定的な差異はヴィッキーの存在を曖昧にしたことだろう。彼女は誰にも見えない。朧げに認識できるジュリアをのぞけば、そこに存在しない霊(生きているのに)の様なものとして描かれる。これはある意味では正論。

いくつかの要素を並べた物語は、燃える様な激しさだが、そこには不可思議な部分が残される。ヴィッキーの存在そのもののように…それが少し物足りない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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