フレンチアルプスの麓で起こるタイムリープ映画
2022年12月19日
ファイブ・デビルズ
©2021 F Comme Film - Trois Brigands Productions - Le Pacte - Wild Bunch International - Auvergne-Rhône- Alpes Cinéma - Division
【出演】アデル・エグザルコプロス、サリー・ドラメ、スワラ・エマティ、ムスタファ・ムベング、ダフネ・パタキア、パトリック・ブシテー
【監督】レア・ミシウス
幕切れに登場するある人物の意味するものは何?
匂いを嗅ぐことで、それに結びつく記憶や当時の感情が蘇ることをプルースト効果と呼ぶ。フランスの作家マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の中に、主人公がマドレーヌを焼いた匂いから幼少時の記憶を思い出す一節があり、そこから名付けられた。
五感の中でも「嗅覚」は視覚や聴覚よりも早く備わった感覚と言われ、感情や本能、記憶に働きかける力が強く、この効果を利用して認知症になった人の記憶を取り戻す研究が進められているそうだ。
プルースト効果を上手く使った映画ですぐに思い出すのは、筒井康隆原作の『時をかける少女』(1983/大林宣彦監督)だ。ラベンダーの匂いを嗅ぐと意識を失って時間旅行にいざなう。
本作も大前提としては、主人公の少女ヴィッキー(サリー・ドラメ)に特別な能力としての嗅覚があるということ。そこに、ある香りを嗅ぐと意識を失ってタイムリープするという状況が加わって物語が展開する。
ヴィッキーを取り巻く大人たちは、黒人の消防士の父ジミー(ムスタファ・ムベング)と白人の水泳インストラクターの母ジョアンヌ(アデル・エグザルコプロス)。それとその一家に10年ぶりにやってきたジミーの実妹で訳アリのジュリア(スワラ・エマティ)だ。
匂いを嗅ぐだけでなく、材料を色々集め調合することまでやるこだわりのヴィッキーが、ジュリアのバッグの中にあった怪しげなビンの中身を嗅いだ途端、タイムループが始まる。
どの時代のどこの場所に行ったかは伏せておくが、舞台となるフレンチアルプスの麓にある田舎の村ファイブ・デビルズの閉鎖性は、横溝正史の舞台(八つ墓村、鬼首村など)を想起させる。
村ではあからさまな同性愛嫌悪や黒人差別が存在し、いじめられ抑圧される。そういった環境の中で起こる惨事。
最後、映画の幕切れに登場するある人物の意味するものは何だろうか?解釈は色々できるが、再生だと願いたい。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。