岐阜新聞 映画部

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盗まれた愛ブタを奪還するためのリベンジ映画

2022年12月07日

PIG/ピッグ

2020 Copyright © AI Film Entertainment, LLC

【出演】ニコラス・ケイジ、アレックス・ウルフ、アダム・アーキン、カサンドラ・バイオレット
【監督・脚本】マイケル・サルノスキ

ニコラス・ケイジの鮮烈な演技

ニコラス・ケイジ(1964-)は、『リービング・ラスベガス』(1995)でアカデミー賞主演男優賞を受賞するなど若くしてトップスターになったが、5度の結婚や浪費癖などでも知られ、近年は借金返済のためか大物俳優にも関わらず片っ端から映画に出演していた。

そんな玉石混淆の出演映画の中から突如凄いのが現れた。新鋭マイケル・サルノスキ監督『PIG/ピッグ』である。

物語はいたって簡単。オレゴンの山中で愛ブタと一緒に暮らすトリュフハンターのロブ(ニコラス・ケイジ)が、盗まれた愛ブタを奪還するためのリベンジ映画で、自分の過去と向き合いながら喪失感を埋めていくという内容だ。

まず語りたいのはニコラス・ケイジの役柄と演技だ。彼はクセの強い面長の間抜け顔で、どこから見てもニコラス・ケイジだとわかる特徴的な顔をしているが、本作では言われなければニコラス・ケイジだとわからないくらい作り込んでいる。

セリフも少なく寡黙で森の中では世捨て人となっているロブが、愛ブタを強奪された真相を探るために、怒りをグッと腹の中に治め、踏まれても蹴られても立ち上がる強靭な精神で立ち向かっていく。見事としかいいようのない鮮烈な演技だ。

そのロブの相棒となるトリュフバイヤー・アミール役のアレックス・ウルフもまたいい。少し頼りなさげで気弱そうな風貌であるが、徐々にロブに心酔していく様子は、年長の師と未熟な青年という黄金パターンだ。寡黙なニコラス・ケイジに対するお喋りなアレックス・ウルフという設定は、対等の演技であるからこそバディとして面白い。

ネットによると、ポートランドはアメリカの中でもグルメな街で、住みたい街No.1だそうだが、そんな街だからこそシェフ時代のロブは輝ていたに違いない。懐かしい場所や人を訪ね歩く姿は、自分の真の居場所を確認しているかのようだ。真相は意外な展開を見せるが、ロブの慟哭に嘘はない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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