岐阜新聞 映画部

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終わり(死)は新しい生の始まり、東洋的価値観の映画

2022年11月22日

アフター・ヤン

ⓒ2021 Future Autumn LLC. All rights reserved.

【出演】コリン・ファレル、ジョディ・ターナー=スミス、ジャスティン・H・ミン、マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ、ヘイリー・ルー・リチャードソン
【監督・脚本・編集】コゴナダ

小津映画のような静けさと余白

アンドロイドが主役となる映画はいくつもあるが、なかでも退廃的で東洋の雰囲気をメインにしたSF映画の金字塔『ブレードランナー』(1982)や、人類抹殺用アンドロイドが主役の『ターミネーター』シリーズ(1984~)がすぐに思い浮かぶ。共に想像上の未来都市は、現代から進化したSF的造形のハイテクノロジー都市である。

『アフター・ヤン』は、見た目は人間と変わらないアンドロイドが自然に家族の一員となっている近未来が舞台。今までよく見た無機質な世界ではなく、緑あふれる自然に囲まれ東アジア的な家に住む家族が主役だ。

白人の夫ジェイク(コリン・ファレル)と黒人の妻カイラ(ジョディ・ターナー=スミス)、中国系の養女ミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)にアンドロイドのお兄さんヤン(ジャステン・H・ミン)の4人家族。一人として血は繋がってないが、血縁関係に何の意味があろうかという素敵で羨ましい家族だ。

そんな家族の一員であるヤンが突然機能停止してしまう。人間で言ったら心肺停止だが、アンドロイドなので修理したら元に戻るかもしれない。奔走する家族。人間の命って何?と考えさせられる展開だ。

人間だったら記憶は都合のいいようにしか記録されないが、アンドロイドのヤンのメモリバンクは取捨選択無しに記録される。白日の下にさらされるありのままの真実が果たしていいのか悪いのか?映画は答えを出すまでもなく進んでいく。

小津安二郎を敬愛し、ペンネームは共同脚本の野田高梧(のだこうご)を由来とするコゴナダ監督。小津映画のような静けさと余白がある画面はハリウッド映画とは一線を画す静謐さだ。さらにシーン毎により適切なスクリーンサイズに切り替える巧みさや画質を調整するさりげなさは、天才というほかない。

様々な家族のカタチ。そして終わり(死)は新しい生の始まりという東洋的価値観を感じさせる静かな映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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