岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

美しくもあり恐ろしくもある森の中で出会った奇跡

2022年11月15日

秘密の森の、その向こう

© 2021 Lilies Films / France 3 Cinéma

【出演】ジョセフィーヌ・サンス、ガブリエル・サンス、ニナ・ミュリス、マルゴ・アバスカル
【監督・脚本】セリーヌ・シアマ

女の子だって楽しい2人の秘密基地

映画に出てくる"森"のイメージは様々だ。例えば『ムーミン』が住んでいるような北欧の木々に囲まれた風景であったり、『もののけ姫』のシシ神(森の最高の神)のような心の奥底に眠る畏怖の念だったりする。

本作でセリーヌ・シアマ監督が描いた森は、自身の原体験からイメージしているということ。象徴的な空間というより実践的な場所で、ある時は自由を感じ、ある時は脅威を感じる場所。絵画のような美しい風景はポエムそのものである。

そんな美しくもあり恐ろしくもある森の中で、8歳の主人公ネリー(ジョセフィーヌ・サンス)は、自分と瓜二つの少女(ガブリエル・サンス)と出会う。この少女がネリーの母マリオンの8歳の頃というファンタジーな設定も、ジョセフィーヌとガブリエルが本当の双子ということもあり、没入するのに障害はない。おすまし顔の2人は本当に可愛いのだ。

今年日本で公開されCINEXでも上映された中国映画『こんにちは、私のお母さん』も、自分の母の若い頃に会うというタイムスリップもので20歳前後という設定だったが、『秘密の森の、その向こう』は8歳という設定で、子ども時代のど真ん中だ。

大人のしがらみや常識というしばりはまだなく、好奇心大せいな年頃。出会った少女が実は自分のお母さんだったという展開も、ファンタジーというくくりで突破できる。

美しい森の中にある少女マリオンの秘密基地。ネリーは大きな枝を運んで手伝う。秘密基地って勝手に男の子のイメージを持っていた私だが、それは間違った認識だとはっきりわかった。女の子だって楽しいのだ。

マリオンがネリーを自分の家に連れていくが当然それはネリーにとっては祖母の家だ。デジャブを感じ違和感を覚えるネリー。

説明セリフがほぼ無いので、若干こんがらがる部分もあるが無駄は一切ない。上映時間73分という潔さは、ただ時間だけが長い映画へのアンチテーゼとなっている。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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