岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

格差社会に弾かれたある女性の闘い

2022年11月08日

ドライビング・バニー

©2020 Bunny Productions Ltd

【出演】エシー・デイヴィス、トーマシン・マッケンジー、エロール・シャン、トニ・ポッター、ザナ・タン
【監督】ゲイソン・サヴァット

正義のためという大義でも愚かに見えるのが辛い

ニュージーランド・オークランドが舞台。交差点には信号待ちの車が停車している。そのわずかな時間をねらい、バンドモップを手にした一団がやって来て、フロントガラスのクリーニングを始める。"小銭=チップ" 稼ぎが目的だが、非合法の行為であるが故に、警察の取締りに遭遇したりもする。それでも仲間の連帯感はあって、あくまでも明るく、悲観する様子は表面上は見えない。

そこにバニー・キング(エシー・デイヴィス)がいた。訳ありの彼女は、妹グレース(トニ・ポッター)夫婦の家に居候しながら、離れ離れになっている娘シャノンの誕生日パーティーを開くため、息子のルーベンも一緒に、家族水入らずで住むことができる住宅を探している。

住宅不足のオークランドでは公営住宅は順番待ちには途方もない時間を必要とした。そして、バニー親子が別々に暮らさなければならない訳が存在した。

ニュージーランドはおおよそ日本の70%の国土だが、人口は500万人足らず、にも関わらず住宅不足は深刻化している。加えて、日本のアパートに属する集合住宅が極端に少ない。かわりの賃貸物件は一軒家に間借りするケースが多いのだが、これには単身者や子どものいないカップルに限られてしまうため、バニーのような子持ちのシングルマザーは排除の対象となる。そういう事情下、彼女のとった突飛な行動は必死のやむなき手段と言えなくもない。

そして、彼女には子どもの親権を停止させられるような事情が存在した。ふたりの子どもは里親のもとにあずけられ、バニーは直接会うこともできないし、電話で話すことすら制限されていた。このことも彼女を追い詰め行く。

『ドライビング・バニー』は、強い母性が故に、当たり前に許されて良い権利獲得のために、闘うことを選択してしまう女性の話である。途上国のようなエピソードがニュージーランドにも存在することに少なからず驚く。そして、姪のトーニャ(トーマシン・マッケンジー)のことも含めて、生き難い社会に愕然とする。果てに希望はあるか?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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