岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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レストラン誕生へのもうひとつの革命

2022年10月31日

デリシュ!

©︎2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS

【出演】グレゴリー・ガドゥボワ、イザベル・カレ、バンジャマン・ラベルネ、ギヨーム・ドゥ・トンケデック
【監督】エリック・ベナール

パイ生地に包み隠された真の美食家への挑戦状

1789年、革命前夜のフランスが舞台。

とある公爵家の料理人マンスロン(グレゴリー・ガドゥボワ)は、晩餐の料理の準備に忙しい。てきぱきと助手たちに指示を出し、調理場を支配している。それでも給仕長からは、指定された料理だけを作ること、余計な事はするなと、釘を刺される。

マンスロンには小さな企みがあった。新作の料理を供すること…それは料理人としてのプライドが後押しする挑戦でもあった。

当時のフランスでは、特権階級だった貴族層は、人口比にすると1%未満だったと言われている。その貴族が所領としていた土地は、国土全体の20%に及んだ。そして何よりその土地の内容に目を向ければ、圧倒的な優良物件に占められていたと想像できる。領民から吸い上げた税金、収穫物の上納など、貴族は理不尽に権利を行使して庶民を縛っていた。

マンスロンは主催者シャンフォール公爵(バンジャマン・ラベルネ)に呼び出され、見慣れない新作(?)料理の説明を求められる。

咄嗟に "デリシュ" と命名した料理は、薄切りにしたじゃがいもと、スライスしたトリュフを重ねて、パイ生地で包み焼き上げたものだった。

その頃のフランスでは今や超高級食材のトリュフでさえ、貴族の食事には使わない素材だったし、ましてや、じゃがいもは豚の餌にされていた。

食材を知った会食の出席者たちは、マンスロンの振る舞いを何かの冗談かと失笑するのだが、ひとり、豚の餌を食べさせられたと皿を投げつける主賓がいた。厳格な階級が存在した貴族社会。デリシュの皿を投げつけたのは聖職者。その身分は、公爵よりも上だった。

『デリシュ!』は、謝罪を拒絶し宮廷料理人をクビになったマンスロンが、一般の人たちのために料理を供し、その情熱を取り戻す物語である。

作り出される料理はどれも美味しそうに見え食欲を刺激する。空腹時にはご用心の眼福が満載。

誰にも開かれた場、レストランの誕生を目撃し、革命の裏話を知る、豪華盛りの映画になっている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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