岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品ストーリー・オブ・マイ・ワイフ B! 始まりは賭けだった 船乗り男の愛の行方 2022年10月19日 ストーリー・オブ・マイ・ワイフ ©2021 Inforg M&M Film Komplizen Film Palosanto Films Pyramide Productions RAI Cinema ARTE France Cinéma WDR/Arte 【出演】レア・セドゥ、ハイス・ナバー 【監督・脚本】イルディコー・エニェディ レア・セドゥの妖艶な魅力に圧倒される 船乗りは男の世界。男だけのだらけの世界と言いかえてもよい。 貨物船の船長ヤコブ(ハイス・ナバー)は、船医から生活習慣の改善の忠告をうける。突然の食欲不振はその警告かも知れない。身のまわりのことに関わってくれる妻をめとることをすすめられる。 1920年、マルタ共和国の街のカフェ。陸に上がったヤコブは、友人との会食中、その医師からの提案を話題にする。独身生活が深くしみ込み、当たり前になっているヤコブの迷いをからかう友人に、勢い半分、ひとつの賭けを持ちかける。 「次に店に入って来た女性と結婚する」 現れたのはリジー(レア・セドゥ)という女性だった。突然のヤコブの申し出にも、うろたえる様子も見せず、彼女は冷静に対応する。 他の男との待ち合わせをよそに、ヤコブは自身の賭け=プロポーズを決行する。 『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』は、ハンガリーの作家ミラン・フストの小説を原作に、同じくハンガリー出身のイルディコー・エニェディが監督、脚本を手がけている。 不思議な出会いから始まる男と女の愛のしがらみ、その深層にまで入り込もうとする執拗なカメラアイは、前作『心と体と』(2017/日本公開2018年)で見せた、不器用でかみ合わない中年の男女の恋模様を描いた時と同様の、粘着性溢れる演出を堅持している。 出会った日のその週末、ヤコブとリジーは2人だけで結婚の儀式を行う。順調で幸せそうに見える2人の生活が始まるが、船乗りヤコブは仕事につくため、長く家を空けることになる。 このことは、妻リジーに対する、拭い去れない疑心を試す時間の賭けでもあった。「リジーは待っていてくれるだろうか?」 映画は男女の心理の襞に、時に強く時には繊細に触れるが、あくまでもヤコブの視点に限定される。謎めき、それを更に深めるリジーの側から描かれることはない。この一方的な男目線の愛の行方の明確化には長い時間を必要とする。結末で知る痛みは切なくもあり滑稽でもあり。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (10)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2023年09月25日 / ふたりのマエストロ 笑って泣けて共感できる「予定調和」の映画 2023年09月20日 / 658km、陽子の旅 回帰を模索する苦辛のロードムービー 2023年09月20日 / 658km、陽子の旅 引きこもりのフリーターがヒッチハイクで旅をする more 2021年04月14日 / 宮崎キネマ館(宮崎県) 南国の街で良質な映画を送り続けるミニシアター 2017年12月01日 / 岐阜CINEX(岐阜県) 柳ヶ瀬商店街で映画文化を送り続ける老舗映画館 2021年06月23日 / 【思い出の映画館】シアターホームラン(埼玉県) 小江戸・川越で映画の灯を守り続けた老舗劇場 more
レア・セドゥの妖艶な魅力に圧倒される
船乗りは男の世界。男だけのだらけの世界と言いかえてもよい。
貨物船の船長ヤコブ(ハイス・ナバー)は、船医から生活習慣の改善の忠告をうける。突然の食欲不振はその警告かも知れない。身のまわりのことに関わってくれる妻をめとることをすすめられる。
1920年、マルタ共和国の街のカフェ。陸に上がったヤコブは、友人との会食中、その医師からの提案を話題にする。独身生活が深くしみ込み、当たり前になっているヤコブの迷いをからかう友人に、勢い半分、ひとつの賭けを持ちかける。
「次に店に入って来た女性と結婚する」
現れたのはリジー(レア・セドゥ)という女性だった。突然のヤコブの申し出にも、うろたえる様子も見せず、彼女は冷静に対応する。
他の男との待ち合わせをよそに、ヤコブは自身の賭け=プロポーズを決行する。
『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』は、ハンガリーの作家ミラン・フストの小説を原作に、同じくハンガリー出身のイルディコー・エニェディが監督、脚本を手がけている。
不思議な出会いから始まる男と女の愛のしがらみ、その深層にまで入り込もうとする執拗なカメラアイは、前作『心と体と』(2017/日本公開2018年)で見せた、不器用でかみ合わない中年の男女の恋模様を描いた時と同様の、粘着性溢れる演出を堅持している。
出会った日のその週末、ヤコブとリジーは2人だけで結婚の儀式を行う。順調で幸せそうに見える2人の生活が始まるが、船乗りヤコブは仕事につくため、長く家を空けることになる。
このことは、妻リジーに対する、拭い去れない疑心を試す時間の賭けでもあった。「リジーは待っていてくれるだろうか?」
映画は男女の心理の襞に、時に強く時には繊細に触れるが、あくまでもヤコブの視点に限定される。謎めき、それを更に深めるリジーの側から描かれることはない。この一方的な男目線の愛の行方の明確化には長い時間を必要とする。結末で知る痛みは切なくもあり滑稽でもあり。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。