岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

どこまでもロマンチックな大人のラブロマンス

2022年10月19日

ストーリー・オブ・マイ・ワイフ

©2021 Inforg M&M Film Komplizen Film Palosanto Films Pyramide Productions RAI Cinema ARTE France Cinéma WDR/Arte

【出演】レア・セドゥ、ハイス・ナバー
【監督・脚本】イルディコー・エニェディ

船の上では英雄でも、陸上(おか)に上がればただの人

本作の監督イルディコー・エニェディは絶対知らないと思うが、『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』は、私が愛してやまない昭和30年代の日活アクションを彷彿とさせる海洋活劇映画であった。

港町や船上を舞台に、マドロスさんと訳アリ女性との愛の語らいやすれ違い、主人公の船長が友人と賭けをした「最初に入ってきた女性と結婚する」という荒唐無稽な設定、キザなライバルの登場など、石原裕次郎や浅丘ルリ子、二谷英明の世界である。

ときは第一次大戦が終わって2年後の1920年。ロシア革命による社会主義国家ソ連の成立、多額の賠償金に苦しむドイツの不満などを抱えつつも、国際協調と平和が模索されていた時代だ。

そして物語のスタートは地中海に浮かぶマルタ島。最近では映画のロケ地としても有名だが、未だに現存するカトリック修道会の騎士団"マルタ騎士団"のかつての本拠地としても知られている。

時代といい舞台といい、設定はどこまでもロマンチックでファンタスティックなラブロマンスである。

船長のヤコブ(ハイス・ナバー)は"海の男"。先ゆく船路や迫りくる嵐にはめっぽう強いが、惚れた女にゃからっきし弱い。輝かしい過去は"英雄"だったけど、陸上(おか)に上がれば"ただの人"なのだ。

一方リジー(レア・セドゥ)は現実主義者。船乗りさんには憧れても、「船に乗って亭主についていく」なんてことはしない。「女は男の添えもんじゃない」「一緒に居たけりゃ陸上(おか)に上がってこい」という女性なのである。

映画はヤコブとリジーの関係性が徐々に変わっていく様子を、極上の小説を読むように7つの章立てで構成しているため、観ていて混乱することはない。そしてすべてはヤコブの視点で描かれており、リジーの複雑性や理解し難い行動は、あくまでもヤコブから見た彼女となっている。

『心と体と』に続く監督の最新作は、見応えのあるラブロマンスだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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