岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

山に生き山を護る人を見つめたドキュメンタリー

2022年10月03日

木樵

©2021「木樵」製作委員会

【出演】面家一男、澤和宏、瀧根清司 ほか
【監督】宮﨑政記

飛騨は山の中 森と獣と人が共に生きている

民俗学者の宮本常一が、最初の調査旅行=フィールドワークの地として、石徹白を訪れたのは昭和12年のことだった。

当時、石徹白は福井県大野郡(現在・大野市)だったが、昭和33(1958)年に岐阜県に編入され、郡上市白鳥町石徹白となった。

5年前の2017年、ゴールデンウィークが始まる前の週、岐阜県郡上市を訪ねたことがあった。当時、白山信仰に嵌っていて、縁の地を巡るというのが目的だった。

白鳥町の長滝にある天台宗長瀧神社を皮切りに、まだ所々に残雪が見える、僧侶や修験者の修行の場、前谷の落差60メートルの阿弥陀ケ滝でマイナスイオンを浴び、石徹白の白山中居神社にたどり着いた。

神社の御本殿は、石徹白川と支流の朝日添川を城の堀の様に配し、背後の山肌には杉の巨木が林立する荘厳な空気に包まれた神聖な場所だった。

民俗学では、山に生きる人々を克明に記録にとどめた。山窩、木地師、マタギ…今や職名としては使われなくなってしまった "木樵(きこり)" 。

本作は山に生きる人、林業従事者の木樵に密着したドキュメンタリーである。

響き渡るチェーンソーの音。かつては斧が木肌に当たる途切れ途切れの音が、連続したモーター音に変わった。木を倒す方向を調整するために木片の楔を打ち込む時、コンコンという木槌の音が響く。山にはこの素朴な音の方が似合っているような気がする。機械化は効率を上げても、木樵の仕事は木を伐ることだけにはとどまらない。

監督の宮﨑政記は岐阜県下呂市生まれで、父は木樵だった。高度成長期には絶頂期だった木材の需要は、安価な輸入材などに押され下降線をたどり、林業は不況の時代に堕ちる。宮崎は父の跡を継ぐことを断念し、映像作家への道を選択した。

30年を経て、再び山に戻った時、誇り高き仕事 "木樵" の姿を記録にとどめたいという思いを結実させたのが本作となる。

現役の木樵である面家一男、瀧根清司兄弟に密着し、木を伐り運び出して完結する彼らの "技" を映しだす。山に棲まう人たちの記録である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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