岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

日本のストーリーアニメとフランスのアートアニメが見事に結合

2022年09月15日

神々の山嶺

© Le Sommet des Dieux - 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma

【監督】パトリック・インバート

山岳アニメとして画期的であり見応え充分

世界でアニメ大国と言えば、すぐにアメリカと日本の名が思い浮かぶことだろう。ヨーロッパでも両国制作のアニメが席巻しているようだが、フランスやイギリス、スペイン、チェコ等には知る人ぞ知るアート系アニメの伝統がある。

なかでもフランスは、ポール・グリモー監督の『やぶにらみの暴君(のちに「王と鳥」として改作)』(1952/ヴェネチア映画祭審査員特別賞/キネ旬6位)をはじめ、アカデミー賞にもノミネートされるような秀作を輩出している。

本作は夢枕獏の同名小説をパトリック・インバートが監督したフランス製アニメだ。ネットによるとフランスは日本に次ぐ世界第2位の漫画市場で「神々の山嶺」を漫画化した谷口ジローは絶大な人気を誇っているということ。

またフランスには日本のような30分ものの連続アニメはほとんどなく、短編か映画用の長編が主体。そのためキャラクター造形が豊かでストーリー性に富み大人にも充分楽しめる日本の連続アニメは、新鮮で絶大な人気があるらしい。

『神々の山嶺』は、物語として面白い日本のアニメ文化と、アート系に優れた作品の多いフランスのアニメ文化が見事に融合し結実した実に新鮮なアニメ映画である。

特に新鮮なのはキャラクター造形だ。エベレストの自然の風景、東京の居酒屋や街並みなどは詳細に描きこまれているが、人物はシンプルそのもの。線画が中心で陰影がなく昔の漫画のようだ。強いて言えばフランス文化に大きな影響を与えた「北斎漫画」みたい。

同じ小説を実写映画化した平山秀幸監督の『エヴェレスト 神々のの山嶺』(2016)は、山岳撮影に、エヴェレスト7回登頂の山岳カメラマン村口徳行氏を起用したこともあり自然のリアルさは圧倒的であったが、本作はアニメでしかなしえない画づくりで決して負けていない。フランスのアニメーターの実力のほどがわかる。

山岳アニメとして画期的であり見応え充分だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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