岐阜新聞 映画部

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エベレスト初登頂の謎に挑んだ冒険小説のアニメ化

2022年09月15日

神々の山嶺

© Le Sommet des Dieux - 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma

【監督】パトリック・インバート

美しき登山家は何故孤高の人なのだろう?

夢枕獏の小説「神々の山嶺」は1994年の連載開始から3年を経て、97年に単行本化された。

登山家の羽生丈二が、前人未到のエベレスト南西壁冬季無酸素単独登頂に挑む姿を描いている。

日本の山岳小説と言えば、すぐに名前が思い浮かぶのは新田次郎だ。「孤高の人」「銀嶺の人」といった作品で、山岳小説というジャンルを形作ったと言っても過言ではない。映画化された作品も多く、2009年に公開された『剱岳 点の記』(木村大作監督)は、まだ、記憶に新しい。

77年に高倉健主演で公開された『八甲田山』(森谷司郎監督)は、大ヒットとなり高倉健の代表作にもあげられるが、これは軍隊の山岳訓練を描いており、山岳登山という枠からは少しずれる。

翌、78年にも森谷監督による『聖職の碑』が映画化されたが、これも大正期にあった事実をもとにした山岳遭難を描いている。

夢枕獏の小説は、日本の出版の中にあった確固たるジャンル "山の本" を踏襲しており、2016年には、平山秀幸監督、岡田准一、阿部寛の主演で実写映画化されている。

また2000年には谷口ジローによる漫画化がはじまり、3年の連載後に単行本化された。原作に忠実な漫画化だが、一部オリジナルの部分がある。 本作『神々の山嶺』は、この谷口版の漫画をアニメ化したもので、フランスで制作された。

エベレストへの初登頂は、記録上は1953年5月29日にニュージーランドのエドモンド・ヒラリーとチベット=シェルパのテンジン・ノルゲイが人類史上初とされている。しかし、それよりも以前の1924年6月にイギリス人登山家のジョージ・マロリーが、登頂に挑み、山頂付近で消息を絶っている。「マロリーは初登頂を成し遂げていたかもしれない?」物語はこの謎の解明に対峙する孤高の登山家羽生と、彼を追う雑誌カメラマン深町誠を中心に描かれる。

ドキュメンタリーによる生の映像の対極にありながら、その杞憂を覆す、手に汗握る迫力の絵作りが素晴らしい。アニメーションによる登山シーンの再現には、登山家が目指す山頂への道のりと同じ困難があったと想像できる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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