岐阜新聞 映画部

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沖縄戦の真実を知る反戦映画

2022年08月30日

島守の塔

©2022 映画「島守の塔」製作委員会

【出演】萩原聖人、村上淳、吉岡里帆、池間夏海、榎木孝明、成田浬、水橋研二、香川京子
【監督・脚本】五十嵐匠

凛と登場する香川京子は “生きる” を象徴する存在となる

沖縄戦は第二次世界大戦末期の1945(昭和20)年の連合国軍(概ね米軍)と日本軍の戦闘のことを言う。3月26日にはじまり、本格的な組織的な戦闘が開始された4月2日から6月23日まで続いた。

『島守の塔』はこの沖縄戦を描いた映画だが、はじまりは、まだ、戦火の遠かった平穏な日常のなかにある生活の様子が描かれる。

当時の沖縄県知事は官選であった。着任した泉守紀は、はじめからこの職務に乗り気でなかった。各官庁の折衝を口実に、東京への出張を繰り返し、ついには職務から逃れるように香川県知事に鞍替えしてしまう。表向は正式な辞令をもとにした配置転換だが、戦争の危険を察知した泉の逃亡と形容できる画策があったと推測される。その後、暫く、知事は空席の状態となる。

この頃、事実上のNo.2の役職であった警察部長の職には栃木県清原村(現・宇都宮市)出身の内務省の役人だった荒井退造が就任しており、空席の知事の役も兼務していたとされる。

昭和20年1月、米軍の上陸が必至と見られ難航していた沖縄県知事の職に島田叡が就任する。

兵庫県須磨村(現・神戸市)に生まれた島田は、神戸二中時代から野球に熱中し、東京大学在学中もスター選手(外野手)として名を馳せた。卒業後、内務省に入省。警察畑を歩み、知事の打診を受けた当時は、大阪府内政部長の職にあった。

島田は知事就任後、関係が悪化していた軍との信頼を回復し、来るべき危機に備えた。

島田叡は萩原聖人が演じる。就任の挨拶でいきなり "てるてる坊主" を歌い、豪快な気風で部下たちに溶け込もうとする島田像を熱演している。

警察部長の荒井(村上淳)とともに、県民に寄り添う姿、汗をかき、泥にまみれた行動力、圧倒的な権力である大本営の理不尽な命令を押しつける軍にも、はっきりとものを言う真摯な姿勢には感銘を受ける。

また、知事の世話役についた比嘉凛を演じた吉岡里帆は、身内を全て亡くす悲運に遭遇しながらも、"生きる" を貫く女性の姿を好演している。 戦争の真実を忘却させない意志と、命と平和の尊さを示す力作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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