岐阜新聞 映画部

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近未来の日本を想定した生と死の物語

2022年08月29日

PLAN 75

©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

【出演】倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン、大方斐紗子、串田和美
【監督・脚本】早川千絵

老と孤独を見事に具現化した恐怖 その先に希望は見えるか?

ホテルの客室清掃員として働く78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)がいる。その同僚も高齢者ばかり。

テレビのニュースでは、少子高齢化が社会問題化した日本で、満75歳を対象にした生死の選択権を認める "PLAN 75" と呼ばれる制度が国会で可決されたことを告げる。当初は安楽死の法制化には反対する意見が多かったが、様々な議論のうえで制度化されたことを告げ、世界に先立つモデルケースとして注目されていると強調する。

『PLAN 75』は、2018年に公開された5人の若手監督による、10年後の日本を題材にした短編5篇からなるオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の同名の1編を長編化した作品である。

市役所に設けられた "PLAN 75" の窓口業務を任された岡部ヒロム(磯村勇斗)は、慣れない新設の仕事を手さぐりですすめている。人の命に関わる内容でありながら、あくまでも事務的に仕事を処理しようとする上司の態度に、一抹の疑問を感じるようになっていた。

ある日、ホテルの仕事中、ミチの同僚が急病で倒れる。それをきっかけに、高齢者雇用の見直しが行われ、ミチは失業してしまう。それに追い討ちをかけるように、アパートの退去を迫られる。高齢者が新たな職や住いを得るのは至難のことだった。途方に暮れたミチは、"PLAN 75" の申請を決意する。

物語は近未来の日本を想定したものだが、あくまでも架空の話である。しかし、高齢者が直面する現実はリアルにシンクロするものでもある。独居生活における経済的な困窮は、社会保障が崩壊してしまえば、必ずや突きつけられる。

日本の平均寿命は80歳をはるかに超え、人生100年と想定され、老後の資金は○○万円必要となる、とか、年金は目減りするとか、聴こえてくるのは悲観的な脅迫に似た声が多い。

映画は静かに進行する。その静寂からは冷淡さすら浮かび上がる。if の物語として達観できないのは、不安という漠然とした恐怖が、ふとした瞬間に自らの目の前に突きつけられているからに他ならない…怖い映画だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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