岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

言葉を超え、形を超越するラブストーリー

2018年03月05日

シェイプ・オブ・ウォーター

©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

【出演】サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スツールバーグ、オクタヴィア・スペンサー
【監督】ギレルモ・デル・トロ

圧倒的なギレルモ監督の世界観に陶酔!

 黄金期のミュージカル映画が、丸いブラウン管テレビに映っている頃、業界で使う挿絵が、写真に取って代わられようとする頃、ソ連が有人宇宙飛行に成功してアメリカとは冷戦状態だった頃…鳴り始めた目覚まし時計に伸びる女性の手。キッチンへ向かい、スプーンに乗せた卵を鍋で沸騰した泡だらけのお湯に入れ、タイマーをセットする。バスルーム、ゆっくりとバスタブに浸かる。水との交わり(?)…まるで儀式の様に見えるイライザ(サリー・ホーキンス)の日常。隣人のジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)は独居の初老の挿絵画家で、そんな彼に夜食を届けるイザベラはよき話し相手でもあるが、彼女には声がない。ふたりの住むアパートメントは映画館の階上にある。夜勤に出かけるために外に出たイライザの後方で、チョコレート工場の火災の炎が見える。ここまでの怪しげで美しいファーストシークエンスが、この映画が普通のファンタジーでないことを予告する。
 イライザが掃除婦として勤めているのは政府の研究所。同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)のお喋りは、旦那の愚痴ばかり。ここでもよき聞き役であるイライザとは、同僚以上の友情で結ばれた関係に見える。
 そこへ、特別な研究対象である不思議な彼が運ばれてくる。映画には“クリーチャーもの”というジャンルがある。クリーチャーは伝説や想像上の生き物のことで、怪物、怪獣、妖精、妖怪、宇宙人など、さまざまなカタチがある。闇雲に襲い襲われる恐怖映画もあれば、ラブロマンスに昇華する恋愛映画もある。ネタばれになってしまうが、『シェイプ・オブ・ウォーター』はこのジャンルに位置する。しかし、用意された映画の世界観は冒頭からこの予備情報を超越する。
 沸騰する水の泡。ガラス窓の上を自在に形を変えながら滑る水玉。ふたりを包み込む深い海の水。言葉はなくても、形は違っていても、思いはつながる。このギレルモ・デル・トロ監督の創造世界は圧巻。心震える名作の誕生!

『シェイプ・オブ・ウォーター』はイオンシネマ各務原、TOHOシネマズ モレラ岐阜、TOHOシネマズ岐阜などで全国ロードショー。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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