岐阜新聞 映画部

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16歳の郵便配達員の体験が伝える反核の意志

2022年08月09日

長崎の郵便配達

©️The Postman from Nagasaki Film Partners ©︎坂本肖美

【出演】イザベル・タウンゼンド、谷口稜曄、ピーター・タウンゼンド
【監督・撮影】川瀬美香

タウンゼント父娘の継承が普遍的な広がりとなることを願う

ピーター・タウンゼントは、1914年、当時は英国領だったビルマ・ラングーン(現・ミャンマー・ヤンゴン)で生まれた。軍人であった父の意向もあり、1930年英国空軍に入隊し、35年に操縦士官に任命され、36年、シンガポールの飛行隊に配属された。

第二次世界大戦中のいくつかの活躍功績により、1944年に国王ジョージ6世の副官に任命され、その後、正式に王室付きの侍従武官となった。

1952年、国王の死去によりエリザベスが女王に即位した頃、女王の妹マーガレット王女とロマンスが持ち上がり、結婚の話で世間を騒がせたが、これは破局してしまう。

16歳年上で離婚歴があり、子どももいたタウンゼントとの結婚には、イギリス国教会と議会の強い反対があったとされているが、確かなことはわからなし、本人もこのことを語ることはなかった。

身分の違いを超えたロマンスは、映画『ローマの休日』(ウィリアム・ワイラー監督/1953=日本公開54年)のモデルとなったと言われている。

タウンゼントは英国軍を退官後、ジャーナリストに転身し、長崎で被爆した男性を取材したノンフィクション「THE PNSTMAN OF NAGASAKI」を1984年に発表する。

『長崎の郵便配達』は、この時の取材対象者だった16歳の郵便配達員・谷口すみてるさんのその後を、2018年、タウンゼントの実娘イザベル・タウンゼントさんが長崎を訪れ、父と谷口さんとの思いを、自らの目で見つめ直したドキュメンタリーである。

父・ピーター・タウンゼントは、その著者のほかに、肉声で記録したボイスメモを残していた。その声にそっと耳を傾ける娘イザベルが、思いを受け止めて、長崎を訪ねる決意をする。

被爆者谷口さんが2017年に亡くなるまでに続けた語り部としての責務の思い。当時の長崎にいた2万人を越えるキリスト教信者たちの存在。イザベルさんは父を経由していた被爆地・長崎の姿を直に自らの心根に落とし込んでいく。

語り継ぐ事の意味と意義を新ためて知る好編だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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