岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

未完成な青年が彷徨う危うい青春映画

2022年08月02日

イントロダクション

【出演】シン・ソクホ、パク・ミソ、キム・ヨンホ、イェ・ジウォン、ソ・ヨンファ、キム・ミニ、チョ・ユニ、ハ・ソングク
【監督・脚本・撮影・編集・音楽】ホン・サンス

想像力を駆立てる構成だが手繰り寄せた先に何も見えない

ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』を筆頭に、韓国映画は世界を席巻している。それは、映画にとどまることなく、ネット配信のドラマなどでも、大ヒット作を続々と生み出している。

是枝裕和監督は『ベイビー・ブローカー』を韓国で製作したが、その際、取材のインタビューに答えるかたちで、韓国と日本の映画製作の現場の違いについて語っている。

ただでさえ、日本映画の現場では、数々の問題が暴露されたりして、その現状に対する批判が集中していた。

是枝監督は撮影クルーの潤沢な人員を指摘している。これは韓国映画が国際基準に則した労働現場としての、撮影現場を確立していることの証でもある。

日本の現場にある、体育会的な精神主義みたいな体質は、旧態の映画会社による撮影所主体の現場が消滅した後も残り続け、会社の枠がなくなってもなお、労働の対価である賃金では、不透明極まりない "どんぶり勘定" が居座り続けている。

風通しの良い環境下で、優れた才能が芽生え発芽する好循環は、韓国映画の質を高めている。

ホン・サンス監督は、1960年ソウル生まれ。カリフォルニア美術学校、シカゴ美術館附属美術大学で、美術の修士を取得したという異色の経歴を持っている。映画監督デビューは1996年の『豚が井戸に落ちた日』。同じ年、同じ年生まれの故キム・キドク監督が『鰐 ワニ』でデビューしている。

『イントロダクション』は長編25作目にあたる。ほぼ1年に1作品という順調なキャリアを構築し、国際的にも高い評価を獲得している。

青年ヨンホにまつわる3部構成で、折り合いの悪い父親、旅立ってしまう恋人、微妙で危ういバランス関係にある母親との、ひと時を描いている。モノクロの映像は冷たい冬の色を映しだす。独特すぎるスタイルで展開する会話だけでは、時系すら読み取り難い。"イントロダクション=導入" というタイトルにある糸口を見つけることで、ヨンホの成長する姿は見えるのかも知れないが…。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

89%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (1)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る