岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品イントロダクション B! 青春の苦さや痛みを淡々と語っていく、ホン・サンスの世界 2022年08月02日 イントロダクション © 2020. Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved 【出演】シン・ソクホ、パク・ミソ、キム・ヨンホ、イェ・ジウォン、ソ・ヨンファ、キム・ミニ、チョ・ユニ、ハ・ソングク 【監督・脚本・撮影・編集・音楽】ホン・サンス お馴染み、酒を酌み交わすシーンが素晴らしい 恋する男女の軽妙でウィットに富んだ会話と、独特の撮影スタイルが特徴のホン・サンス映画。緻密に練られた脚本を、撮影当日朝にしか俳優やスタッフにも見せないことで準備された芝居とならず、さらにワンシーンワンカットによる緊張感とライブ感で観客の耳目を集める。 ホン・サンスがコロナ以降に撮影・発表した『イントロダクション』(2020製作)と『あなたの顔の前に』(2021製作)がCINEXでも同時公開され私も初日に観てきた。 2作を同じ日に観るとホン・サンス作品の特徴がよくわかる。 CINEXで公開された『逃げた女』(2019製作)にもあった「謎のズームアップや奇妙なパン」は本2作でもあるが、「謎」ではなく、意味があるのだと分析できるようになる。登場人物は限られた人間関係の中で相手が入れ替わるもののシーンは反復され、しかし少しづつ映像的にも演出的にも重層的になってくる。 酒を酌み交わすシーンが必ず入るが、お約束事として片付けるのでなく、なければならない重要な事柄として意味を成してくる。 『イントロダクション』はモノクロームで66分という短い上映時間ではあるが、ベルリン映画祭で銀熊賞(脚本賞)を受賞した。映画は3つの章に分かれ、主人公ヨンホ(シン・ソクホ)の青春の苦さや傷みがそれぞれに淡々と語られていく。 イケメンのヨンホは勧められて俳優になるが、彼女に遠慮してキスシーンを拒否し俳優を辞める選択をする。勧めてくれた老俳優に罵倒される姿は実に痛々しい。「そんな奴おれへんやろ」と思わないでもないが、ヨンホは俳優なんかやりたくなかったのだろう。 若い頃に自分が何者なのか?と悩む姿を象徴的に表しているが、最後の章で冬の冷たい海に下はパンツ一丁で飛び込むシーンは清々しい気分になってくる。一緒に付いてくる男友達の意味合いは一切示されないが、わかるような気がする。期待通りの映画だ。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター 4Kで甦る 憎悪の泥に塗れた官能的な愛の物語 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター ジェーン・カンピオン監督の最高傑作、完璧な作品 2024年04月24日 / RED SHOES/レッド・シューズ オーストラリア発バレエ舞台の成長物語 more 2024年01月24日 / 【思い出の映画館】吉祥寺バウスシアター(東京都) 面白い事なら何でもやっちゃうエンタメ三昧の映画館 2019年04月24日 / 高知あたご劇場(高知県) 高知市内に創業当時の姿で映画の火を灯す 2022年08月10日 / シネマヴィレッジ8(青森県) リンゴ畑の真ん中にあるシネコンで家族揃って。 more
お馴染み、酒を酌み交わすシーンが素晴らしい
恋する男女の軽妙でウィットに富んだ会話と、独特の撮影スタイルが特徴のホン・サンス映画。緻密に練られた脚本を、撮影当日朝にしか俳優やスタッフにも見せないことで準備された芝居とならず、さらにワンシーンワンカットによる緊張感とライブ感で観客の耳目を集める。
ホン・サンスがコロナ以降に撮影・発表した『イントロダクション』(2020製作)と『あなたの顔の前に』(2021製作)がCINEXでも同時公開され私も初日に観てきた。
2作を同じ日に観るとホン・サンス作品の特徴がよくわかる。
CINEXで公開された『逃げた女』(2019製作)にもあった「謎のズームアップや奇妙なパン」は本2作でもあるが、「謎」ではなく、意味があるのだと分析できるようになる。登場人物は限られた人間関係の中で相手が入れ替わるもののシーンは反復され、しかし少しづつ映像的にも演出的にも重層的になってくる。
酒を酌み交わすシーンが必ず入るが、お約束事として片付けるのでなく、なければならない重要な事柄として意味を成してくる。
『イントロダクション』はモノクロームで66分という短い上映時間ではあるが、ベルリン映画祭で銀熊賞(脚本賞)を受賞した。映画は3つの章に分かれ、主人公ヨンホ(シン・ソクホ)の青春の苦さや傷みがそれぞれに淡々と語られていく。
イケメンのヨンホは勧められて俳優になるが、彼女に遠慮してキスシーンを拒否し俳優を辞める選択をする。勧めてくれた老俳優に罵倒される姿は実に痛々しい。「そんな奴おれへんやろ」と思わないでもないが、ヨンホは俳優なんかやりたくなかったのだろう。
若い頃に自分が何者なのか?と悩む姿を象徴的に表しているが、最後の章で冬の冷たい海に下はパンツ一丁で飛び込むシーンは清々しい気分になってくる。一緒に付いてくる男友達の意味合いは一切示されないが、わかるような気がする。期待通りの映画だ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。