岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

安心品質のメーテレが放つ赤裸々な恋愛

2022年07月19日

わたし達はおとな

©2022「わたし達はおとな」製作委員会

【出演】木竜麻生、藤原季節、菅野莉央、清水くるみ、森田想/桜田通、山崎紘菜、片岡礼子、石田ひかり、佐戸井けん太
【監督・脚本】加藤拓也

これは極めて不愉快な映画だ

メーテレ製作の映画たち。「淵に立つ」「勝手にふるえてろ」「寝ても覚めても」「愛がなんだ」「本気のしるし(劇場版)」などなど。どれも傑作ぞろいである。そしてこの度、「わたし達はおとな」が加わった。

ビックリした。これは極めて不愉快な映画だ。でもめちゃくちゃ面白く、めちゃくちゃ凄い。圧倒的なクオリティの前に映画の好き嫌いなど吹き飛んで心がザワザワし続けていた。その要因は登場人物の言動にある。特に主人公優実(木竜麻生)の恋人である直哉(藤原季節)は最低だ。いつも相手より優位に立とうと薄っぺらなセリフでその場を取り繕う。自己中心的で相手のことなど考えない主張や言い方に優実のイライラも募っていく。そして最終的には売り言葉に買い言葉、壮絶な修羅場へと突入してしまうのだ。しかし、最初は笑顔の多い恋人どうしだったことが回想で語られる。その関係性の変化が切ない。まぁ直哉の自己中心的な一面はそのころから見え隠れしていたのだが。

そんな若者の赤裸々な恋愛と性愛を描く加藤拓也監督の語り口は才気に満ちている。現代はスタンダードサイズ、回想はヨーロッパビスタサイズという画角を採用しているのだ。そして現代パートの冒頭はアップを多用し、映画が進むにつれてロングショットが多くなる。カメラも絶えず物越しに捉えていて圧迫感がある。一方の回想パートはロングショット多めの解放感あるショットが多い。そして全編を通して手持ちを多用しながらも小刻みな手ブレは抑えられた映像。随所にきらめく長回し。息苦しさと緊迫感とリアリティを生む計算が見てとれる。

となれば必然的に現代パートは木竜麻生と藤原季節の2人しか映っていない場面が多くなる。観客は常に2人の演技のみを見続けるという、演技の良し悪しが作品の完成度に直結するという凄まじい撮り方。しかし、2人は見事な演技でそれに応えている。腕を組んだりするちょっとした仕草や表情に宿る感情、その感情が噴き出す瞬間の爆発力、止まらぬ言葉の応酬など凄まじいリアリティだ。これまでも気骨と才能のある監督とともに高めあってきた2人の実力を改めて感じた。もっともっと活躍してほしいと心から思う。

加藤拓也、木竜麻生、藤原季節の3人にこの言葉を贈りたい。またスクリーンでお会いましょう。

語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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