岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品FLEE フリー B! 真実を語るためのアニメーションドキュメンタリー 2022年07月05日 FLEE フリー © Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved 【監督】ヨナス・ポヘール・ラスムセン 戦争、難民、差別、LGBTQ、現代社会で闘う人の声 1990年代の後半、アフガニスタンでは、政情の不安定さが市民の生活にも影響を与え始めていた。 まだ幼いアミンは、兄妹たちと自由奔放な日々を送っていたが、ある日、父親が当局に連行されることとなり、家族の生活は一変する。 いつまで経っても帰らない父。ついに家族は祖国からの脱出を決断する。 『FLEE フリー』は、30代となったアミンが、インタビューを受けるところから始まる。映像はアニメーション。未だに故郷に帰ることもままならない、難民として生きること、そこにまだ生命の危険を感じるような迫害の危機が存在すること、その事実を考慮した上で、映像はアニメーションに変え、インタビューによる証言は本人の生の声を使うという手法が取られている。 国境を接するロシアへ逃れた家族は、難民用の住宅を充てがわれるが、行動は制限される。自由を求め西側へ亡命するには資金が足りない。家族は働き手になる長兄の出国を優先するが、それは家族が離れ離れになることを意味した。 監督は自身も迫害を受けたロシアから逃れた、ユダヤ系移民の家系であるヨナス・ボヘール・ラムセン。親友でもあるアミンに寄り添い、真実の言葉を導き出す。 容赦なく搾取するロシア警察の腐った体質。亡命をコーディネートする裏組織の如何わしくも生々しい存在と、映画は醜い暗部までを抉り出す。 そして、もう一つはアミンが心に閉じ込めておかなければならなかった "ゲイ" であることだ。 アフガニスタンなどのイスラム教の国では、ゲイはその存在そのものが否定される。アフガニスタンには同性愛者はいないというのが、絶対の建前となる。 アミンの心のアイドルは "ジャン=クロード・ヴァン・ダム"。マッチョなアクション俳優への憧れはいつもクローゼットの中に仕舞われていた。 デンマークへ辿り着き、教育も受け、研究者として成功したアミンは、ようやく真実を語る決意をする。戦争、難民、差別、LGBTQなど、現代社会の幾つもの場所で消えることのない問題を、優しいアニメーションドキュメンタリーは強く訴えかける。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (9)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2023年06月06日 / せかいのおきく 阪本順治監督の代表作のひとつとなる秀作 2023年06月06日 / せかいのおきく 幕末を舞台に健気な生業を見つめた青春時代劇 2023年06月06日 / せかいのおきく 小説の連作短編集みたいな味わいの映画だ more 2022年05月25日 / シアターキノ(北海道) 上映作品を選ぶにも妥協は許さない…北の都の映画館。 2020年09月30日 / 新宿武蔵野館(東京都) 創設百周年を迎えた新宿の伝説的映画館 2020年12月23日 / 早稲田松竹映画劇場(東京都) 学生街に今も残る昔ながらの二本立て名画座 more
戦争、難民、差別、LGBTQ、現代社会で闘う人の声
1990年代の後半、アフガニスタンでは、政情の不安定さが市民の生活にも影響を与え始めていた。
まだ幼いアミンは、兄妹たちと自由奔放な日々を送っていたが、ある日、父親が当局に連行されることとなり、家族の生活は一変する。
いつまで経っても帰らない父。ついに家族は祖国からの脱出を決断する。
『FLEE フリー』は、30代となったアミンが、インタビューを受けるところから始まる。映像はアニメーション。未だに故郷に帰ることもままならない、難民として生きること、そこにまだ生命の危険を感じるような迫害の危機が存在すること、その事実を考慮した上で、映像はアニメーションに変え、インタビューによる証言は本人の生の声を使うという手法が取られている。
国境を接するロシアへ逃れた家族は、難民用の住宅を充てがわれるが、行動は制限される。自由を求め西側へ亡命するには資金が足りない。家族は働き手になる長兄の出国を優先するが、それは家族が離れ離れになることを意味した。
監督は自身も迫害を受けたロシアから逃れた、ユダヤ系移民の家系であるヨナス・ボヘール・ラムセン。親友でもあるアミンに寄り添い、真実の言葉を導き出す。
容赦なく搾取するロシア警察の腐った体質。亡命をコーディネートする裏組織の如何わしくも生々しい存在と、映画は醜い暗部までを抉り出す。
そして、もう一つはアミンが心に閉じ込めておかなければならなかった "ゲイ" であることだ。
アフガニスタンなどのイスラム教の国では、ゲイはその存在そのものが否定される。アフガニスタンには同性愛者はいないというのが、絶対の建前となる。
アミンの心のアイドルは "ジャン=クロード・ヴァン・ダム"。マッチョなアクション俳優への憧れはいつもクローゼットの中に仕舞われていた。
デンマークへ辿り着き、教育も受け、研究者として成功したアミンは、ようやく真実を語る決意をする。戦争、難民、差別、LGBTQなど、現代社会の幾つもの場所で消えることのない問題を、優しいアニメーションドキュメンタリーは強く訴えかける。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。