岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

謝罪のできない言い訳野郎VSお節介女を描いた傑作

2022年06月29日

わたし達はおとな

©2022「わたし達はおとな」製作委員会

【出演】木竜麻生、藤原季節、菅野莉央、清水くるみ、森田想/桜田通、山崎紘菜、片岡礼子、石田ひかり、佐戸井けん太
【監督・脚本】加藤拓也

「ありがたいと思っているけど」に腹が立つ

本作の加藤拓也監督は28歳。演劇やテレビドラマで注目を集めてきたが、『わたし達はおとな』で長編映画デビューを飾った。

若者の恋愛事情を描くのに監督の年齢は関係ない。むしろ若い監督は往々にして技術的に難があったり独り善がりになったりする。

しかし加藤監督は、おそらく自分の身近にいた嫌な奴や調子こいた奴、弁の立つ奴らをつぶさに観察し、鋭く分析しながらシナリオを書き、今の若者がそこにいるようなリアリティで演出したのだろう。

何か勘違いしていたりどこかズレていたり、他人とも自分とも向き合えない若者の生態を、マウント取り合いのセリフの応酬や予測不能の行動で生々しく描いていく。

出てくる若者はみんな痛い人たちで、見ていてイラっとしたり恥ずかしくて冷汗が出てくる。

その筆頭は直哉(藤原季節)だ。すでに一般の感想では「歴史的クズ野郎」との称号が送られているが、私からすると「謝罪のできない言い訳野郎」だ。妊娠させた彼女?の優実(木竜麻生)と話すときも「ありがたいと思っているけど」と前置きしてから、一言一句を論破していく。

嫌な奴だとは思うが、実は私は何度も背中に悪寒が走ったのだ。「私もこれと同じような事をしているのではないか?」。自分と向き合うのは辛いし逃げ出したくなるが、なんか片意地張ってしまうところがある。直哉はクズには違いないがシンパシーを感じる自分がいる。

優実の元カレの「ストーカー野郎」将人(桜田通)。プレゼントマニアで、別れた後も、ハート形のネックレスや二人の想い出漫画集、化粧水などをあげる。気持ち悪いとは思うがそこまで悪い奴では無い。今でも好きなんだから察して欲しい。

優実だって、「グリーンピースを食べられるようにしてあげたい」など大きなお世話だ。でもホントはチョッピリ嬉しいかも。

素直になりたいと思いつつ、つい突っかかってしまう人間の性を描いた傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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