岐阜新聞 映画部

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落ち着いて観られるおとなのラブストーリー

2022年06月28日

ツユクサ

©2022「ツユクサ」製作委員会

【出演】小林聡美、平岩紙、斎藤汰鷹、江口のりこ、桃月庵白酒、水間ロン、鈴木聖奈、瀧川鯉昇、渋川清彦、泉谷しげる、ベンガル、松重豊
【監督】平山秀幸

パンツを巡る会話は「やっぱり猫が好き」。大爆笑必死

草の葉に唇をあてたり、葉をまいたりすることで笛のように音を奏でる「草笛」。私は今でも草木に囲まれた田舎で暮らしているが、子どものころには草笛を吹いて遊んでいた。道端に生えている「スズメノテッポウ」と言われるイネ科の雑草の葉っぱの付け根を吹くと、子どもでも簡単に音が出た。

でもマサキやツユクサなどの葉巻笛はちっとも音が出なくて悔しかった思い出がある。本作を観ていたら子どもの頃のそんな情景が浮かんできた。

タイトルにもなっている「ツユクサ」は、湿った空き地や道端など日本中のどこにでも生えているありふれた雑草だが、ちょっとした工夫で素晴らしい音色が出る。

映画『ツユクサ』は、短いようで長い人生、ありふれているようで予定通りにいかない人生を、どこにでもある「ツユクサ」とそれを使った草笛に例えながら、静かに綴ったおとなのラブストーリーだ。

映画は、芙美(小林聡美)の車に月隕石がぶつかるという1億分の1の確率のファンタジーで物語は始まる。このありえない奇跡は、人が生まれて「自分自身」になる確率と同じで、この世に生を受けたことが自体が「ありえない奇跡」なのだと思わせる。「ありえない隕石衝突」と「ありふれたツユクサ」。実にうまい対比である。

親友の直子(平岩紙)も同僚の妙子(江口のり子)も、芙美を含めて3人とも1人目の夫とは死別か離別している。直子は新しい夫(渋川清彦)がいて、妙子には坊さんの恋人(菊島純一郎)がいて、芙美にも訳アリの恋人(松重豊)が出来る。

この大人の恋路に、直子の一人息子・航平君(斎藤汰鷹)が絶妙の立ち位置で関わってきて、姦しい会話で和ませてくれる。中でも女3人で買い物に行くシーンでのパンツを巡る会話は、小林聡美・もたいまさこ・室井滋の傑作シチュエーション・コメディ「やっぱり猫が好き」を彷彿とさせて大爆笑必死だ。

落ち着いて観られる大人の恋愛映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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